田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 いわゆる「ハッシュタグ祭り」が、ツイッターを中心に相変わらず盛んだ。検察庁法改正案を契機に、政治的な話題が常にツイッターのトレンド入りをしている状況が続く。

 最近見られたのが、愛知県の大村秀章知事に対する解職請求(リコール)運動に関連したハッシュタグだ。「#大村知事のリコールを支持します」というハッシュタグと、その反対のメッセージを伝える「#大村知事のリコールに反対します」が同時に並んでいる。

 おそらく多くの会員制交流サイト(SNS)の利用者は、この政治的なハッシュタグの争いに嫌気がさしているのではないか。

 筆者は、個人的には大村知事のリコール運動にエールを送っているが、あえてこの祭りには参加しなかった。この問題だけではなく、トレンド入りしているハッシュタグ祭りに積極的に参加することは、これからもないだろう。

 確かに、ハッシュタグを利用することで、運動を盛り上げていく利便性はある。また論点を炙り出していく効用もあるだろう。だが、それ以上に問題なのが「集団分極化(Group Polarization)」の側面があることだ。

 この集団分極化という現象は、ハーバード大ロースクールのキャス・サンスティーン教授が提起したものだ。インターネットで特定の集団が意見を極端化させ、対立的な意見を持つ人たちを排し、時には政治的に先鋭化していく現象である。

 今のツイッター上のハッシュタグ祭りには、この悪い集団分極化が顕著に表れていると思う。悪い集団分極化がさらに社会一般まで波及していけば、社会の分断にまで行き着くだろう。
記者会見する愛知県の大村秀章知事=2020年5月
記者会見する愛知県の大村秀章知事=2020年5月
 ただし先述のように、ハッシュタグ祭りが悪い集団分極化だけをもたらすわけではない。今回の大村知事のリコール運動をめぐる論争も、多くの人にとって初めて目にする問題だったかもしれない。

 その意味で、社会問題を気づかせる効果や情報の集約化で役立つ面もあるだろう。筆者は最近のハッシュタグ祭りは、単にリツイート数の大小を競う幼稚な面があるので、悪い側面ばかりが気になるのだが、そのような利用ばかりではないことを強調しておいていいかもしれない。