そもそも、民主党の大統領候補であるバイデン前副大統領については「物忘れ」のひどさや、セクハラ疑惑、息子の裏金疑惑などがあり、不安材料が多すぎる。

 ゆえに、バイデン氏が今後の予備選挙で過半数をそろえられないことがあったり、順調に過半数の代議員を確保できたとしても、民主党幹部らの説得により、クオモ知事に民主党大統領候補の地位を譲ることになるのではないかという観測さえあった。

 いずれにしても4月上旬のいくつかの世論調査で、多くの人がバイデン氏よりクオモ知事が大統領候補として望ましいと答えた。クオモ知事は民主党だけに当然ではあるが、トランプ氏と競うかのように一日に何度も記者会見を開き、誇張が目立った。次のような一例がある。

 ニューヨーク州は4月初旬時点で、3万台以上の人工呼吸器と14万人分の病床が必要だとして、その提供を大統領に求めたが、シアトルに本部がある国際的な医療関係統計調査機関、保健指標評価研究所(IHME)の試算では、これはそれぞれ、約5千台と2万3千床だった。つまり、自らが脚光を浴びるために相当誇張した数字を主張していた可能性が高いという。

 これについては、トランプ大統領も直感的にクオモ知事の誇張を見抜いていた。3月下旬にFOXの番組に出演した際、クオモ知事の主張する数字への疑念を表明。いずれにしても3万台の人工呼吸装置を直ぐには作れないという「常識論」を主張した。

 これに対し、クオモ知事は「2万5千人を殺す気か!」と絶叫し、それに多くのリベラル派メディアが追随した。こうしてスーパースターとしてのクオモ知事のイメージが作られていったのだ。特にCNNでは、キャスターの一人でクオモ知事の弟が、トランプ大統領の演説のビデオを編集し、「トランプがすべき準備をしていなかった」という誤った議論を助けるための欺瞞を行った。

 実際は、トランプ大統領は1月末には、米疾病予防管理センター(CDC)を活性化し、タスクフォースを作り、公衆衛生に関する非常事態宣言により中国からの旅行制限をしていた。それが3月13日の国家非常事態宣言に繋がっていくのである。この連邦政府の非常事態宣言により、以下のことが可能になった。

•財政、人事、サービス、ロジスティックス、および技術支援の形での州への連邦支援の活性化

•社会保障法を含む他の法律で緊急規定を引き起こすこと

•個人、組織、州政府、地方自治体に対する規制要件の緩和

•国家インシデントマネジメントシステム (NIMS)およびその他の緊急対応システムのアクティブ化

 これらを見ても分かるように、米国は連邦制なので、日本以上に非常事態の対応は州(地方自治体)の役割であり、それをサポートするのが国の役割である。実際、米国では州の非常事態宣言の方が重視される傾向があり、クオモ知事もトランプ大統領に先駆けて3月7日に宣言している。この州による宣言で、以下のようなことが可能になった。
米ニューヨークの医療センターで、新型コロナウイルス用区画の近くを歩く医療関係者=2020年5月26日(ゲッティ=共同)
米ニューヨークの医療センターで、新型コロナウイルス用区画の近くを歩く医療関係者=2020年5月26日(ゲッティ=共同)

•州緊急対応計画と相互扶助協定の活性化

•州緊急オペレーションセンターとインシデントコマンドシステム(ICS)の活性化

•資金を支出し、人員、設備、備品、備蓄を配備する権限

•対応活動に関与する人々のための法的免責および責任保護の活性化

•規則および規制(および許可されている場合は法令)の一時停止および放棄

 このように米国では、国家と州の役割が「合わせ鏡」のようになっているが、非常事態対処の主体は日本以上に地方自治体(州)にあり、その足りない部分を補うのが国家の役割になっている。