そのためクオモ知事は、前述のような派手なパフォーマンスができるのである。休業させる業種に関して最後まで国との調整に苦労した東京都の小池百合子知事とは違うのである。

 今回クオモ知事は、州内の緊急に必要ない人工呼吸装置を州兵に探させて、それを収集して必要な病院に運ばせたりしている。また、外出自粛に違反した場合、罰金を最大1万ドルとした

 このような権限があるにもかかわらず、なぜクオモ知事は感染爆発が起こるまで外出自粛命令を出さなかったのかという疑問がある。少々悪意が過ぎるかもしれないが、ニューヨーク州を悲惨な状況にすることで、自らに注目を集め、大統領への道を目論んでいたのではないかとさえ思う。

 実際、ニューヨーク市だけで全米の新型コロナ感染による死亡者の3割近くにのぼっている。それがなければ米国の死亡率は通常のインフルエンザとあまり変わらない。コロンビア大の分析によると、ニューヨークが1週間早く外出禁止令などを出していた場合、メトロエリアで1万7千人以上の命が救われたとしている。

 それどころかクオモ知事は連邦政府の指針を無視して新型コロナに感染した高齢者を介護施設に戻した。結果として5400人が介護施設で亡くなった。これは米国における介護施設での死亡者の20%以上である。共和党が調査に乗り出しており、介護施設で亡くなった人の家族でクオモ知事を「人殺し」呼ばわりしている人もいるという。

 ニューヨーク州は人口1900万人中、約2万7千人が新型コロナで亡くなった。だが、約4千万人で最も人口の多いカリフォルニア州は約2800人。テキサス州は、約2900万人で2番目に人口が多いが、死亡者は1121人にとどまっている。これらの州がニューヨーク州より死亡者が少ないのは、むしろ感染したら生命に危険の及ぶ介護施設の入所者らに対策を集中したからである。

 それは逆の視点から見れば、感染しても助かる可能性の高い若者への対策を減らしたということだ。その結果、亡くなった若者もいたかもしれないが、全体としての死亡者数を減らすことができた。阪神大震災以来、日本でも取り入れられるようになった「トリアージ」(助かる可能性のある人を優先的に救助する)の考え方だろう。真の危機管理とは、こうした厳しさを伴うものだ。

 日本における在り方にもいまだ賛否があるが、憲法に組み入れるかどうかは別として、何らかの強制力を伴った緊急事態法の整備を急ぐべきではないだろうか。日本は米国と違う中央集権国家であり、東京以外の道府県の財政力も弱すぎる。米国の州兵のような制度もない。日本版緊急事態法は、国家が中心となるべきだろう。そうすれば米国のような地域による不整合は避けられる。

 一方、日本で最も感染者が多い東京都を任された小池知事はどうだろうか。小池知事は「希望の党」を結党した2017年秋の都議選での失敗に学んだのか、評価はさまざまあるが、今回のコロナ対応では自身の存在誇示は比較的抑制的だったように思う。
記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年5月29日、東京都庁
記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年5月29日、東京都庁
 それでいて一部の遊興業を休業要請に加えさせるなどのリーダーシップも発揮している。安倍晋三首相と小池氏は過去の失敗から学んで進歩し続けることや、危機に強いリーダーシップなど似た部分がある。