そもそも小池知事は、2007年に防衛大臣に就任した当時に断行した事務次官の更迭は、ワシントンでも高く評価された。

 今回のコロナ対応についても、5月末に感染者数が増えているにもかかわらず、東京都の経済再開を「ステップ2」に進め、その数日後には感染率が再び増加したため「東京アラート」を出している。個人の人命に関わる感染リスクと都や国全体に関係する経済再開のバランスを、ギリギリで巧みに決断した。これも一つの「トリアージ」的な危機管理である。

 また、2017年の総選挙の際、「排除する」という発言は重大な失言と思われてしまったが、この発想こそが「トリアージ」であり、危機管理で最も重要な発想でもある。

 もし次の解散総選挙で都知事を辞し、衆院議員候補として再度出馬すれば当選する可能性が高いだけに、ポスト安倍の意外な有力候補なのかもしれない。今回の経緯を見ても彼女であればクオモ知事のようなことはしないだろう。

 特にコロナ問題で米中関係は今まで以上に悪化し太平洋上で両国の超音速戦略(核)爆撃機が、お互いを牽制し合う状況にまでなっている。日本のメディアはあまり報道しないが、日本上空で米国の戦略爆撃機と航空自衛隊の戦闘機の合同訓練まで始まっている。いつ熱い戦争が起きても不思議ではない。特にコロナや香港の問題で米中関係は緊張の度合いを高めている。

 こうした危機にもリーダーシップを発揮できる可能性が高い小池知事ならば、ポスト安倍も順当のようにも思われる。特に今回のコロナ対応は彼女にとってよいトレーニングになったように思う。

 今まで述べてきたように危機管理や国家安全保障とは、マニュアルのない状態でギリギリの決断をすることである。まして先述のような米中の超音速戦略(核)爆撃機による攻撃などで、もし仮に1千万人以上の都民を強制避難させるような事態が起きたとしたら、非常に強力な強制力を持った、真の緊急事態法の整備は急務であり、今回の教訓が生かされるだろう。

 米国では国家と州の「合わせ鏡」がなければ緊急事態は機能しない。そこでクオモ知事の行動にもトランプ大統領による一定の歯止めもあったことは先述した。
米フロリダ州で発言するトランプ大統領=2020年5月30日(UPI=共同) 
米フロリダ州で発言するトランプ大統領=2020年5月30日(UPI=共同) 
 また、バイデン氏の副大統領候補で有力なミシガン州のホイットニー知事も、自らの指導力誇示のために州議会の反対を押し切って非常事態宣言を延長しようとして、共和党関係から訴訟を起こされたりしている。やはり日本では前述のような自治体の能力不足などの理由からしても国家中心でなければ機能しないだろう。

 それでは真の緊急事態に間に合わないという意見もあるが、クオモ知事やホイットニー知事のようなケースを考えると、緊急事態宣言は内閣の一致で行い、1カ月以内に衆参両院の過半数の同意がなければ無効になるというような歯止めが必要なことは、確かだと思われる。