2020年06月07日 17:48 公開

アメリカで白人警官に首を圧迫されて黒人男性が死亡した事件から始まった反人種差別デモが、イギリスでも広がっている。ロンドンやマンチェスター、カーディフ、レスター、シェフィールドといった都市で、数万人が抗議に参加した。

ロンドンで6日開かれた集会では、参加者がひざまずいて1分間にわたり黙祷したほか、「Black Lives Matter」などのスローガンを叫んだ。

この日の抗議活動の大半は平和的に行われたが、首相官邸前では小競り合いがあった。

BBCのトム・シモンズ内政担当編集委員によると、首相官邸前では警官隊に向かって花火などが投げつけられた。

警察の騎馬隊が対応したが、そのうちの1頭が走り出し、乗っていた警官が信号機に頭を打って落馬した。この警官は命に別状はないという。

ロンドン警視庁は、少人数のグループが「怒りで暴力を振るった」と説明。14人を逮捕し、警官10人が怪我をしたと発表している。

ロンドンのサディク・カーン市長はツイッターに「私はみなさんと共にいる。怒りと痛みを共有している」と投稿。一方で、暴力を振るう一部の人が「この重要な目的を台無しにしている」と述べた。

イギリスでは新型コロナウイルス流行を受けて大規模集会が規制されているが、抗議はこうした中で行われた。

プリティ・パテル内相は、他人と距離を取る施策は「あらゆる人の安全のため」のものだと説明。一方、ロンドン警視庁のクレシダ・ディック警視総監はロックダウン(都市封鎖)下での抗議活動は「違法」だと呼びかけた。

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ジョージ・フロイドさんは5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで、武器を持たず後ろ手で手錠をかけられた状態で地面にうつぶせにされ、白人警官に膝で首を9分近く押さえつけられて死亡した。罷免された元警官は殺意のある殺人罪で訴追された。周りにいた警官3人も罷免され、ほう助罪などで訴追された。

この事件を受け、アメリカの黒人に対する差別や暴力に抗議する運動がアメリカ各地で加速している。スローガンとなっている「Black Lives Matter」は、2013年から2014年にかけて使われ始め、2014年8月に南部ミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人男性が白人警官に射殺されたのを機に、全国的な抗議運動と共に広がった。「白人と同じように黒人の命にも意味がある」という意味が込められている。

ロンドンに集まった抗議参加者の多くは顔をマスクなどで覆い、手袋をしている人も見られた。

プラカードの中には「COVID-19よりひどいウイルス、それが人種差別だ」など、新型ウイルスに言及するものもあった。

グレーター・マンチェスターでは、アンディ・バーナム市長が新型ウイルスが再び急速に広がる「リスクが高い」と警告したものの、中心部ピカディリー・ガーデンで約1万5000人が抗議に参加した。

スコットランド・グラスゴーでは反人種差別活動家が、歴史的に奴隷取引に関わりのあった通りの名前を、奴隷だったアフリカ人や黒人活動家、警察暴力の犠牲者の名前などに書き換えるパフォーマンスを行った。

スコットランドでは7日にもグラスゴーやエディンバラ、アバーディーンなどで抗議活動が予定されている。

一方、北アイルランドでは、ベルファストとロンドンデリーでの抗議デモ主催者が検察に訴追される可能性が出ている。

北アイルランドでは現在、ロックダウンの一環として6人以上の集会が禁止されている。

ベルファストのデモでは、他者と距離を取る施策が取られていた。北アイルランド検察庁のアラン・トッド長官は、「いまは非常の時」であり、ロックダウンの規制には従ってもらう必要があると説明している。

欧州やオーストラリアでも抗議の声

ベルリンやマドリード、リスボンといった欧州の各都市でも人種差別に反対するデモが行われ、大勢が「Black Lives Matter」と訴えた。

オーストラリアでは黒人差別のみならず、先住民アボリジニへの迫害問題にも光が当てられ、シドニーやブリスベン、メルボルン、アデレードなどで何万もの人が抗議に参加した。

シドニーでは抗議デモの直前に、新型ウイルス流行を受けた集会禁止が解除されたものの、一部の主催者が違反で罰金を課せられた。

公衆衛生や合法性に懸念

イギリスのパテル内相は、抗議デモの理由や人々の思いは理解できるものの、公衆衛生を最優先にしてほしいと訴えた。

クレシダ警視総監も、大規模集会に参加しない形で抗議の声をあげてほしいと呼びかけた。

また、警察官は抗議者に寄り添うために「ひざまずく」べきではないと述べている。

BBCのリアリティーチェック(ファクトチェック)チームによると、イングランドの新型ウイルス施策にはデモについて書かれていないが、6人以上の「公共の場での集会」を制限しており、大規模なデモは違法となる。

警察は違反者に罰金の警告を渡すことができる。また、反抗する人を逮捕・訴追することも可能だ。

ただ、実際にこうした措置を取るかは別問題で、新型ウイルス流行下での大規模デモは大きな困難を生み出している。

クレシダ警視総監は、警官は「法を順守するためにはたらく」一方で、実際の行動は「ケースバイケース」になるだろうと説明。

3日のロンドン市議会での演説では、週末のデモを散会させたら「非常に深刻な無秩序が生まれることになる」と述べていた。

(英語記事 Thousands turn out for UK anti-racism protests / Australians defy virus in mass anti-racism rallies / In pictures: Protests against racism around world