2020年06月07日 18:36 公開

ヴィクトリア・ル科学担当編集委員、BBCニュース

野生動物の病気が人間にも伝わり、人間を介して世界中に急速に広がる。人間が自然界に侵入すればするほど、病気拡散の勢いは加速する。

新しい病気がどこでどうやって出現するのか研究している国際公衆衛生の専門家たちは、「完璧」な組み合わせだと警告している。

英リヴァプール大学の研究者が主導する研究は、野生動物が媒介するどの病気が、人間にとって最も危険なものか、類型から予測するパターン認識システムを開発中だ。

この研究を含め、世界では今、新たな感染症のアウトブレイク(大流行)に備えるため、さまざまな対策が模索されている。

「6回目が避け切れなかった」

リヴァプール大学のマシュー・ベイリス教授はBBCニュースの取材で、「人類は過去20年間で6つの大きな脅威にさらされた。重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、エボラ出血熱、鳥インフルエンザ、豚インフルエンザ、そしてCOVID-19だ。最初の5つではパンデミック(世界的流行)を回避できたが、6つ目は避け切れなかった」と説明した。

「それに、人類がパンデミックに直面するのはこれが最後ではない。だから野生動物の病気をもっと詳細に調べる必要がある」

その詳細な調査の一環として、ベイリス教授の研究チームは、将来のアウトブレイクを予測するパターン認識システムを開発。これまでに知られている全ての野生動物の病気をデータベース化した。

このシステムでは、科学的に確認されている数千ものバクテリアや寄生虫、ウイルスの中が、どういう対象を感染させるのか、その膨大な量と種類の中から、決め手となる手がかりを見つけ出す。その手がかりをもとに、何がヒトにとって特に深刻な脅威になるのかを特定する。

具体的な病原体を優先的に調べるようこのシステムが特定すれば、アウトブレイク発生前に予防法や治療法の開発に、研究を集中させられる。

「どの病気がパンデミックの原因になるか特定するには、次の段階の研究が必要になるが、まずはこの第一歩で成果を挙げている」と、ベイリス教授は言う。

自然破壊感染リスク拡大

人間は森林伐採を進め、多様な野生動物の生息域に侵入してきた。こうした人間の行動によって、伝染病が野生動物から人間にうつる機会が増えた。これは、多くの科学者が同意することだ。

ユニヴァーシティー・コレッジ・ロンドンのケイト・ジョーンズ教授によると、大規模に農業開発された場所など、人間が作り変え、多様性が失われた生態系では、人間の感染リスクが高まることが、さまざまな証拠からうかがえる」という。

「すべての病気がそうとは限らないが、一部のげっ歯類など、人間の侵入への耐性がとりわけ強い動物が、病原体を効果的に保有し続けて、媒介し、感染源となることが多いようだ」

「そのため、生物多様性を失うことで人間と野生動物が接触することの危険性が増し、特定のウイルスやバクテリア、寄生虫などが人間に伝わる機会も増える」

これまでにも、人間の活動と野生動物の「接点」が、悲惨なほど鮮明な感染リスクとなったアウトブレイクがいくつかある。

1999年にマレーシアで発生したニパウイルス感染症は、オオコウモリから森林との境界に作られた大規模な養豚場に媒介された。野生のオオコウモリが木の上で食べた果物の残りを、木の下で豚が食べたことが原因だった。

この農場で働いていた250人以上が、ニパウイルスに感染した豚と接触し、うち100人以上が亡くなった。新型コロナウイルスの致死率は計測中だが、現時点では1%程度とみられている。ニパウイルスの致死率は40~75%だった。

英リヴァプール大学とケニアの国際畜産研究所に所属するエリック・ファーヴル教授は、研究者はアウトブレイクのリスクが高い地域を常に監視する必要があると話した。

森林との境目にある農場や動物が取引される市場などは、人間と野生動物のいる場所の境界線があいまいで、病気が発生する可能性が高い。

ファーヴル教授は、「こうした接点を定期的に観察し」、特定地域で突然アウトブレイクが起こるなどの「異常が見られたときに対応できるシステムが必要だ」と話す。

「人間にとって新しい病気は、毎年3回か4回発生していると考えられる。アジアやアフリカだけでなく、欧州やアメリカでも起こっている」

ベイリス教授はさらに、新しい病気に対する監視を継続することは、ますます重要になっていると指摘する。

「パンデミック発生につながる、ほとんど完璧と言ってもいい連鎖を人間が作り出している」

ファーヴル教授も、「こうしたことはこれから、何度も何度も起こる可能性がある」と話した。

「人間が自然界と接触するたびに繰り返されてきたことだ。大切なのは、どのようにそれを理解し、対応するかだ」

その上でファーヴル教授は、人間が自然界どういう打撃を与えると、それが自分たちにどう返ってくるのか、新型ウイルスのパンデミックが教訓を提示してくれたと話す。

「私たちが食べる物。スマートフォンに使われている素材。当たり前だと思って使っているあらゆるものを、消費すればするほど、それを自然界から抽出して世界中を移動させることで、ますますもうかる人たちがいる」

「それだけに、自分が消費する資源が、世界にどういう影響を与えているのか、私たち全員が考えなくてはならない」

(英語記事 Coronavirus: This is not the last pandemic