2020年06月08日 11:37 公開

米紙ニューヨーク・タイムズが、ジョージ・フロイドさん死亡をめぐる抗議行動の鎮圧に軍の出動を求める共和党上院議員の寄稿を電子版に掲載し、激しい怒りを買っている。これを受けて同紙は7日、オピニオン面編集長の辞任を発表した。

ニューヨーク・タイムズは、全米各地で人種差別と警察の暴力に抗議する大規模なデモが続く最中の3日、トム・コットン上院議員(アーカンソー州選出)の寄稿を電子版で掲載した。

「軍隊を送り込め」と題し、「暴徒」の集団には「圧倒的な力の誇示」が必要だと主張する内容だった。

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抗議デモをめぐっては、ドナルド・トランプ大統領が軍隊の出動も辞さない姿勢を示しており、コットン議員の論考は大統領を後押しするものだった。

これに対し、同紙の記者や読者らは強く反発。抗議行動として、翌4日に出社しなかった記者もいた。


ニューヨーク・タイムズは当初、オピニオン面は多様な見解を反映することが求められるとし、寄稿の掲載は正しい判断だったとしていた

しかし5日になって、長文の断り書きを掲載。論考は「私たちの基準を満たしておらず、掲載すべきではなかった」と表明した。

辞任したジェイムズ・ベネット氏は、2016年からオピニオン面の編集長を務めていた。今回の寄稿は、配信前に読んでいなかったと明かしていた。

「深刻な失敗があった」

ニューヨーク・タイムズでは従業員800人以上が、寄稿には情報の誤りがあるなどとして掲載を強く非難する抗議文に署名した。

ピュリツァー賞受賞歴がある二コル・ハナ=ジョウンズ記者は、「黒人女性として、ジャーナリストとして、この寄稿の掲載を心から恥じている」とツイートした。

同紙の発行人、AG・サルツバーガー氏は7日、従業員への文書で、「先週、編集過程で深刻な失敗があった。近年で初めてというわけではない」と述べた。

さらにサルツバーガー氏は、ベネット編集長の辞任を報告。「重要な変化の時期においてオピニオン編集部を率いて行くには新たなチームが必要になる」ことに、ベネット氏が同意したと述べた。コットン議員の寄稿には言及しなかった。

さらに、オピニオン面の副編集長だったジム・ダオ氏が異動となり、ケイティ・キングスベリー氏がオピニオン面の編集長代理を務めると発表した。

編集部がつけた見出しも問題視

5日に出した編集長の断り書きでは、「編集作業は拙速で、欠陥があった」、「掲載された記事は、『アンティファのような左翼過激派の一団』の役割に関する主張を事実として示している。だが実際には、そうした主張の裏付けはなく、広く疑問視されている」とした。

さらに、警察官が暴力の最前線で最も被害を受けているというコットン氏の主張は、「誇張であり、真偽を問いただすべきだった」とした。編集部でつけた見出しについても、「扇動的であり使われるべきではなかった」と付け加えた。

別の新聞の編集局長も辞任

一方、ペンシルヴェニア州の新聞フィラデルフィア・インクワイアラーでは6日、スタン・ウィシュノウスキー編集局長が辞任した。

同紙は各地で社会不安が起きていることを伝える記事で、「建物も大切」という見出しを掲載。黒人の死と物的損害を同列視したことに対し、従業員の多くが非難していた。

ウィシュノウスキー氏は、問題の見出しを載せたのは「恐ろしく間違った」決定だったとして謝罪した。

(英語記事 NYT opinion editor quits amid senator's piece row