川上和久(麗澤大教授)

 男性の政治指導者が女性にうつつを抜かすと、ろくなことがない。国を滅ぼすことにつながった歴史的事例が山ほどある。だから、古来、政治指導者が女性に溺れることは、繰り返し戒められてきた。

 紀元前1100年ごろ、中国大陸の殷(いん)王朝第30代の紂(ちゅう)王は、妲己(だっき)という絶世の美女にうつつを抜かし、政治を顧みず、周の武王に攻め滅ぼされたとされる。8世紀の唐代の玄宗皇帝も、楊貴妃を愛するあまり政治をおろそかにし、安禄山の反乱を招き、楊貴妃は「傾国の美女」と言われた。

 政治は冷酷だ。トップリーダーは、どんな批判を受けようとも、最後には決断を下さなければならない。ましてや、新型コロナウイルスが猛威を振るい、時々刻々と移り変わる情勢の中で、最適な判断を求められている。政治家がこんな時期に女性に溺れるなど論外中の論外だろう。

 折しも、緊急事態宣言が出された4月7日の翌々日、4月9日夜に、立憲民主党の高井崇志衆院議員が、新宿・歌舞伎町のセクシーキャバクラに行っていたことが『週刊文春』に報じられた。記事には、その名の通り、ホステスとの「濃厚接触」の実態が赤裸々に描かれていた。

 この高井議員、2月28日に国会の委員会で、安倍晋三首相に「総理の危機感のなさが国民のみなさんを不安にしている」「せめて今後、会食を自粛する考えはないのか」などと説教を垂れていたのだから、言行不一致、特大ブーメランの典型だ。こんな「傾国の大馬鹿野郎」を議員として当選させた立憲民主党の見識が問われよう。女性にうつつを抜かしたい奴は政治など志すべきではない。

 その点、安倍首相は女性にうつつを抜かす危険性があるかどうかといえば、どうやら安心のようだ。政権に返り咲いた直後の2013年に、夫婦関係についてテレビ番組で「家庭の幸福は家内への降伏」とおどけてみせた。私も「恐妻組合理事長」を自認しているが、安倍首相も同じ人種なのだな、と親近感を持った記憶がある。

 自分は自分、妻は妻、女性には目もくれず、政治に邁進する。それは、いわば政治リーダーの一つの理想の姿ではある。

衆院予算委で質問する立憲民主党の高井崇志氏=2018年2月(斎藤良雄撮影)
衆院予算委で質問する立憲民主党の高井崇志氏
=2018年2月(斎藤良雄撮影)
 しかし、夫婦は別人格とばかりに、昭恵夫人のコントロールなど考えずに政治に邁進している間に、「ファーストレディー」として風当たりは強くなる一方だ。

 新型コロナウイルスが猛威を振るい、首相がその対応に奔走している中、昭恵夫人は3月下旬、芸能人らとともに都内の高級レストランで食事し、中庭の桜をバックに写真撮影していたことが『週刊ポスト』にスッパ抜かれた。

 また、3月15日に約50人の団体ツアーとともに大分県の宇佐神宮を参拝したことを週刊文春が報じた。ツアーの主催者に「コロナで予定が全部なくなったので、どこかへ行こうと思っていた」と連絡して、参拝に合流したという。