田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 予備費、アベノマスク、そして中国政府の香港への「国家安全法」導入に対する日本の対応をめぐり、最近「反安倍」を仕掛けるメディアや識者たちが盛んに攻勢をかけている。おそらくは、2009年の民主党政権誕生前に、無責任すぎた「一度はやらせてみよう」という世論を再び掘り起こそうとしているのだろう。

 筆者は、理にかなった政権批判は積極的に行なわれるべきだと考えている。だが他方で、「反安倍」という妄執に囚われた人たちによる多くの批判が、「魔女狩り」や「疑惑商法」に踊らされているものが多いことに呆れている。

 呆れてばかりもいられないので、この連載でも、疑惑商法などに踊らされないための警告を毎回のように発してきた。だが、今までの警告は、本稿で取り上げる話題に比べれば深刻度は低い。

 一つは経済実態が想像以上に悪い可能性があることだ。そして、経済実態をさらに深刻化させることが確実な、財務省の「増税シフト」が明瞭になっていることである。

 まず前者だが、ポイントは「見かけのデータに釣られるな」である。これは反安倍系の識者たちが指摘している政府による統計データの「偽造」とは全く異なる。データを注意深く観察すれば、分かることだからだ。

 内閣府は8日に法人企業統計を反映した今年1〜3月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値を発表した。物価変動を除いた実質GDPで前期比0・6%減、仮にこの伸び率が1年続いた場合の年率換算は2・2%減で、名目GDPは前期比0・5%減、年率は1・9%減だった。

 日本中に衝撃を与えた、同期の実質GDP速報値の年率換算3・4%減から比べると、かなりマシになったかに見える。しかも、景気変動の主因である設備投資が速報値の前期比0・5%減から大きく上昇して1・9%増と、需要項目でただ一つ増加していることが好感された。

 だが、注意すべきは、法人企業統計アンケートの回収率が通常の場合よりも10ポイントほど低下していることだ。通常7割程度あるところ、今回は全企業で6割程度にとどまっている。

 しかも、設備投資の下振れが最も懸念されている中小企業からの回収率低下が目立つ。考えられるのは、新型コロナ危機の影響で、企業の内部情報の集約に問題が生じていて、調査に協力できなかった可能性だ。企業が足元の設備投資についての情報を集約できていないことは、将来に向けた設備投資「計画」の策定が十分にできていないことも意味する。
政府の緊急事態宣言発令から1週間が経ち、マスクを着用しながら東京・銀座を歩く人たち=2020年4月14日
政府の緊急事態宣言発令から1週間が経ち、マスクを着用しながら東京・銀座を歩く人たち=2020年4月14日
 景気は内需といわれる消費や設備投資に加えて、政府支出や純輸出(海外からの受け取りの純増)で決まる。特に、変化の度合いを決定するのが設備投資の動きだ。その設備投資が不安定化していることが、1~3月の統計で分かる。

 つまり、改定値でのGDP「改善」は盛りすぎだということだ。速報値に近いか、場合によれば悪化している可能性さえも否定できない。