2020年06月11日 12:46 公開

イギリス政府で新型コロナウイルス対策顧問を務めていたニール・ファーガソン教授は10日、同国でロックダウン(都市封鎖)が1週間早く始まっていれば、COVID-19による死者は半分に収まったのではないかと発言した。

ロックダウンの判断にも関わっていたファーガソン氏によると、ロックダウン開始直前は3~4日ごとに、アウトブレイク(大流行)の規模が2倍に拡大していたという。

これに対しボリス・ジョンソン首相は、新型ウイルス政策に対する評価を下すには時期尚早だと指摘。

「政府は対策のすべてを振り返り、そこから学ぶ必要があるだろう。だが何もかもが時期尚早だ。この病気はまだまだ続く」と話した。

イギリスでは3月23日にロックダウンが開始された。

同国の新型ウイルスによる死者は、10日時点で4万1128人に上っている。

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インペリアル・コレッジ・ロンドンに所属するファーガソン教授は5月、ロックダウン中に移動の制限などのルールを破ったとされ、政府顧問を辞任している。

この日、下院の特別委員会に出席したファーガソン氏は、「ロックダウンが1週間前に発動していれば、最終的な死者を少なくとも半分に減らすことができた」と発言した。

「我々が当時このウイルスの感染力について知っていたことを思えば、政府の対策には根拠があったと思うが(中略)もっと早く始めていれば死者が少なかったことは確かだ」

ファーガソン教授はまた、ロックダウンを早期に始めていれば、特に介護施設での死者を減らすことができたかもしれないと述べた。

「我々は、高齢者は何かしら守られているだろうという、いさかか楽観的な見通しを立てていたが、そういうことは起こらなかった」

教授によると、政府の非常時科学諮問委員会(SAGE)は介護施設に住む人のリスクを「理論的には予想していた」。そして、2月にはすでに議題に上がっていたという。

しかし、「本当に介護施設を守る唯一の方法は、施設内にウイルスが入らないよう検査を拡大することだった」と説明した。

現在では、新型ウイルスがどのように感染していくのか、多くのことが分かっている。

たとえば、介護従事者は複数の施設で働いていることが多く、そうした状況が感染を広げていた可能性がある。

「ウイルスについて情報が足りなかった」

政府の首席科学顧問を務めるサー・パトリック・ヴァランスは、新型ウイルス対策に関する重要な疑問は「今後、解決される必要がある」と話した。

首席医務官のクリス・ウィッティー教授は、「取り組みをどう改善できるか」を振り返るのはルーティンのひとつだと述べた。

「当時の(中略)問題のひとつとして、ウイルスについて情報が足りなかったことがある」

ロックダウンの遅れについては政府顧問を務めるジョン・エドマンズ教授も「多くの犠牲を払った」と発言している。ただ、3月時点で手に入った情報は非常に乏しく、ロックダウンの決定は「とても難しかった」と語っている。

また、BBCのラジオ番組に出演した数学者のキット・イエーツ氏は、ロックダウンのタイミングを決めるために流行がどれくらいの速さで2倍の規模になるのかを判断した際、特定のモデルに「依存しすぎた」のではないかと指摘した。

「流行のモデリングを行ったSPI-Mチームのメンバーから、合意形成の際にあるモデルの影響が他よりも大きくなっているという懸念の声を聞いた」

これは、「有効な意見や推測がきちんと伝わらなかった」ことを意味するという。

イギリスでは毎日平均1600人が亡くなっている。だがパンデミックの間、新型ウイルスによる死者数がこの数字の一部だったのか、超過死亡だったのかは分かっていなかった。

イギリスでは新型ウイルスの犠牲者の大半は高齢者か、基礎疾患を持っている人だった。


<解説>ジェイムズ・ギャラガー健康・科学担当編集委員

新型ウイルスは2月と3月に「予想を超えて」広がった。

BBCニュースが取材した科学者らは、イングランドではロックダウンが開始される前、毎日およそ10万人が新たに感染していたと推測している。

ロックダウンが1週間早く始まっていればこの数も大きく減り、その結果として死者も少なかったはずだという。

なぜそうならなかったのか。それが政府のパンデミック対策に対する大きな疑問のひとつだ。

その時その時に判断を下すよりも、過去を振り返るほうが格段に簡単だ。

当時は情報が少なく、イギリス全体のアウトブレイクの規模も明らかでなかった。

しかし一部の科学者は、実際にロックダウンが始まる数週間前から、その必要性を説いていた。


(英語記事 'Earlier lockdown would have halved death toll'