2020年06月12日 12:47 公開

ドナルド・トランプ米大統領は11日、米軍がアフガニスタンで戦争犯罪を行った疑いについて捜査している国際刑事裁判所(ICC)の職員に、制裁を科す大統領令に署名した。

大統領令はICC職員に対し、米国内の資産を凍結するとともに、入国を禁止する。

トランプ氏はICCを繰り返し批判し、独立性を疑問視してきた。

ICCは、「法の支配を妨げる許されない試みだ」と反発している。

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ICCは、戦争犯罪があったと信じる理由が見つかったとした予備捜査を受け、捜査に着手していた。

アメリカはオランダ・ハーグに本部を置くICCに加盟しておらず、権限は米国民に及ばないとの立場だ。

この日、大統領令が署名されて間もなく、マイク・ポンペオ国務長官は会見で、アメリカが「いいかげんな裁判で脅される」ことはないと述べた。

また、制裁によって、ICC職員の家族の入国も禁じられる可能性があるとした。

一方、ウィリアム・バー司法長官は、「ロシアのような外国勢力が(中略)ICCを操り、自国の利益を追求している」と、証拠を示さず主張。アメリカのICC批判を増大させた。

人権団体やEUも反発

こうした事態を受け、ICCは声明を発表。アメリカの決定は、捜査を進める「ICC職員の行動に影響を及ぼすことを狙った」ものだとした。

さらに、「ICCに対する攻撃は、非道な犯罪の被害者たちの利益に対する攻撃でもある。被害者の多くにとって、当裁判所は正義を実現する最後の望みとなっているからだ」と訴えた。

人権団体もアメリカの動きを批判している。

「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」のワシントン・ディレクターを務めるアンドレア・プラソウ氏は、「ICCに対するこの暴行は、アフガニスタンであれ、イスラエルやパレスチナであれ、深刻な犯罪の被害者たちが正義を求める努力を妨げようとするものだ」とする声明を発表。

「国際的な正義を支持する国々は、この露骨な妨害工作に異を唱えるべきだ」とした。

欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表も、アメリカの決定に対して「深刻な懸念」を表明。「ICCは国際的な正義を実現し、深刻な国際的犯罪に対処するうえで、重要な役割を担ってきた」と記者団に述べた。

問題の背景

米軍がアフガニスタンで戦争犯罪を行った疑いに関する捜査は、今年に入ってICCが承認した。

ICCの予審判事部は昨年4月、「正義のためにならない」として、戦争犯罪の捜査はすべきではないと判断していたが、これを覆した。

これに対しポンペオ米国務長官は、米国民を訴追から守ると宣言。「法的機関に見せかけた、責任の所在が不明な政治機関による、実に驚くべき行為だ」と述べていた。

ICCの捜査では、2003年5月以降のアフガニスタンにおける、反政府武装勢力タリバン、アフガニスタン政府、米軍の行動が対象になるとみられる。

アフガニスタンはICCに加盟しているが、当局者は捜査に反対する考えを示している。

トランプ氏はこれまで、アフガニスタンにおける戦争犯罪容疑で訴追された米軍関係者を赦免している。

トランプ政権は昨年、ICC職員に渡航制限などの制裁を科した。

米軍にかけられている嫌疑

10年以上にわたった予備捜査では、民間人への意図的な攻撃や、拘禁、裁判を経ない処刑などが調べられた。

ICCの2016年の報告書は、米軍が米中央情報局(CIA)運営の秘密の拘束施設で拷問をしていたと信じるに値する根拠があるとした。

また、アフガニスタン政府による囚人への拷問や、タリバンによる民間人の集団殺害などの戦争犯罪も、あったと思われるとした。

ICCは国際的な司法システムの一部として、2002年から集団殺害や人道に対する罪、戦争犯罪の容疑者を訴追している。

ただ、アメリカが加盟していないため、実効力は弱められていると考えられている。

(英語記事 US targets 'kangaroo' ICC over war crimes probe