2020年06月14日 16:04 公開

ロンドンでは13日、人種差別に反対するデモやそれに対抗するデモが行われ、当局の制止にもかかわらず大勢が集った。一部では暴力沙汰に発展し、警官が殴る蹴るなどの危害を加えられる場面もあった。

ロンドン中心部の衝突で警察官6人が軽傷を負ったほか、100人以上が暴力、警察への攻撃、武器所持などで逮捕された。

警察と衝突を起こしたのは極右のデモ参加者で、反人種差別活動家からイギリスの歴史や銅像などを守るためだと主張していた。

アメリカで黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官の暴行で死亡した事件をきっかけに始まった反人種差別デモが各国に広がる中、イギリスでは人種差別や奴隷制度に関わった歴史人物の像が攻撃対象になっている。

一方、ロンドンやイギリス各地では引き続き、人種差別に反対する平和的なデモも続いている。

ロンドンでは先週、一部のデモが暴力に発展した。ロンドン警視庁は今回、集会を午後5時で終わらせたり、職務質問を拡大したりするなど、暴力抑制に力を入れている。

ボリス・ジョンソン英首相は「人種差別的なごろつきの暴力など、私たちの街にあってはならない」とツイートし、警官に危害を加えたグループを非難。「警察を攻撃する者には誰でも、あらゆる法の力をもって対抗する」と書いた。

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殉職警官の慰霊碑に立小便

この日はイギリス各地から、イギリスの歴史のシンボルを守るなどと主張する極右活動家などがロンドンに集まった。

大半が白人男性で、ホワイトホールの戦没者追悼碑の前に集まったほか、ウィンストン・チャーチル元首相の像の回りに囲いを作るなどした。チャーチル元首相は人種差別的な発言で知られており、一連の差別反対デモでは銅像に落書きがされていた。

差別反対デモに抗議する白人の男たちはこの日、腕を振りかざしながら「イングランド」と叫び、警察の治安部隊と衝突を起こした。

追悼碑を囲った鉄柵を壊したり、旗や発炎筒、三角コーンを警察に投げつける参加者もいた。

その後、右翼の男たちはトラファルガー広場へと移動し、花火を投げつけた。

人種差別に抗議するデモに反対する白人男性の1人は、2017年にウェストミンスターで起きたテロ攻撃で命を落としたキース・パーマー巡査の慰霊碑の横で、立小便しているところを写真に撮られた。

プリティ・パテル内相はこれについて、慰霊碑の「冒とく」は「全く恥ずべき行為」だと非難した。

ロンドン警視庁のバス・ジャヴィド警視長は、「パーマー巡査の慰霊碑に小便をしているように見える男性の、とんでもない唾棄すべき写真がソーシャルメディアで広まっているのは承知している。ただちに捜査に着手した。あらゆる証拠を集めて、適切に対応する」と述べた。

極右代表も参加

一部のデモ参加者がターミナル駅のウォータールー駅方面に向かったため、午後6時ごろにはウォータールーの主要駅や地下鉄駅が一時閉鎖された。

ロンドン救急サービスは、警官2人を含む15人のけがを手当てしたと発表。うち、市民6人は病院に搬送された。

極右グループ「ブリテン・ファースト」のポール・ゴールディング代表は、抗議参加者は「自分たちのシンボルを守るため」に集まったのだと説明した。ゴールディング代表は5月、反テロ法違反で有罪判決を受けた後、仮釈放された。

ロンドン以外でも、グラスゴーやブリストル、ベルファストなどで、戦争記念碑を「守る」ための集会が行われ、数百人が参加した。

BBCのドミニク・カシアーニ内政担当編集委員によると、ロンドンの議会前広場に集まった数百人の多くはすでに酒を飲んでいた状態だった。極右活動家のほか、様々なサッカー・チームを応援するフーリガンたちが、この日はひいきチームの違いを乗り越えて肩を並べて参加していたという。

政治家が相次いで非難

ジョンソン首相は、「一連の行進や抗議は、暴力によってなし崩しに変質してしまった。加えて、現在の(感染対策)ガイドラインにも抵触する。イギリスに人種主義の居場所はない。それを現実にするために協力しなければならない」

最大野党・労働党のキア・スターマー党首も、警察への暴力は「全く受け入れられない」ものだと糾弾した。

「今日ロンドンで行われた抗議活動は、暴力を振るい、自分たちの目論見(もくろみ)のためにヘイト(憎悪)を撒き散らす者たちが先導したものだ。こんな連中を勝たせてはいけない」

反人種差別デモは平和的に

こうした中、ロンドンのハイドパークや隣接するマーブルアーチでは、反人種差別を訴える平和的なデモが行われ、「Black Lives Matter」運動への支援が呼びかけられた。

ただし、この週末に実施予定のデモ行進については、極右グループとの衝突を避けるため参加しないよう、ロンドンの「Black Lives Matter」運動の主催者たちは呼びかけていた。

「Black Lives Matter」というスローガンは、2013年から2014年にかけて使われ始め、2014年8月に南部ミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人男性が白人警官に射殺されたのを機に、全国的な抗議運動と共に広がった。「白人と同じように黒人の命にも意味がある」という意味が込められている。

ブライトンやニューカッスル、リヴァプール、チェルムズフォードといったイギリス各都市でも、反人種差別デモが行われた。

イングランド南部ブライトンでは、海岸沿いの約2キロにわたり参加者が列を作り、沈黙の抗議を行った。

その後、市内を回った行進では、ブライトンの戦争記念碑を占拠した対抗グループと小さな衝突があった。

ニューカッスルでも、「Black Lives Matter」運動の参加者と対抗グループが対峙(たいじ)し、にらみ合った。

ダービシャーで抗議活動に参加しているデニース・リチャーズさんはBBCラジオの取材で、週末はロンドンでの抗議に参加しないと決めたと述べた。

また、平和的な抗議参加者は、極右活動家と暴力的な衝突によって「Black Lives Matter」の取り組みが「汚されて」してしまうことを恐れていると話した。

抗議団体「Hope Not Hate(ヘイトではなく希望を)」のニック・ロウルズさんも、極右団体が騒ぎを起こそうとしており、「非常に深刻な」状態にあると述べた。「Black Lives Matter」が13日にロンドンで予定していた抗議を中止したのは、賢明な判断だったと評価した。

「銅像や記念碑を本気で心配し、守ろうと思っている人も中にはいるが、大勢はけんかをするためにロンドンに向かった。ソーシャルメディアでも、おおっぴらにそうい話をしている」

(英語記事 Protesters clash with police in central London