松沢直樹(フリーライター)

 唐突だが、私は一昨年障害者になった。双極性障害という、他の人には見えない疾患と向き合いながら日々を過ごしている。

 自分の体の変化を一言で表すとしたら、「短時間で電池が切れてしまう年代物のスマートフォン」になったような状態である。充電すれば、なんら機能の制限なく普通に動くが、電池がすぐ切れるために不便極まりない。

 実際、医師の制限で、以前のような活動は制限されている。そのため、調子が良いときでも3時間程度しか働くことができない。また、外出時も突然発作に襲われることがあるため、処方薬の持参はもちろん、落ち着くまでベンチに座って、休憩しなければならないことがある。

 困ったことに、私は一般的な同年代の男性より体格が良い。したがって、電車内の優先席利用がはばかられる。また、年配の方から優先席の利用をとがめられた際に、写真付きの障害者手帳(私の場合は精神保健福祉手帳だが)を提示するのも癪(しゃく)である。そのため、外出時は「ヘルプマーク」を付けるようになった。

 ヘルプマークとは、東京都福祉保健局が作成したマークである。私のような精神障害や、内臓の障害などといった目に見えない疾患で、日常生活に支障がある人が、さりげなく周囲にサポートを求めるためのマークである。

 経済産業省は、2017年7月20日に、東京五輪・パラリンピックに向け、国内外の観光客に分かりやすい案内用図号を採用することを目的に、案内用図記号(JIS Z8210)の規格を見直した。その中にヘルプマークが採用されている。

 この機に周知が進んだのか、電車や交通機関利用時に、配慮してくださる人と出会う機会が増えた。
障害者手帳(左)とハートマーク(筆者撮影)
障害者手帳(左)とハートマーク(筆者撮影)
 しかしながら、これだけ周知が進み、来たる五輪でも公式に使われるマークであるにもかかわらず、ヘルプマークは全国共通ではない。ヘルプマークを発案し、提唱し続けている東京都の調査によれば、2020年5月末時点で熊本、大分、鹿児島の3県にはヘルプマークが導入されていない。

 また、配布方法についても、まちまちである。長野県、宮城県富谷市などは郵送を受け付けているが、大多数の自治体は手渡しでの配布となっている。また、配布場所も一律ではない。