2020年06月15日 15:11 公開

ボリス・ジョンソン英首相は14日、イギリス各地に広がる人種差別反対デモを受け、人種差別対策として「もっとやるべきことがある」と述べた一方、記念碑などを撤去することで「過去を書き換えては」いけないと話した。

英紙テレグラフへの寄稿でジョンソン首相は、「あらゆる不平等」について精査する委員会を立ち上げる予定だと発表した。

ジョンソン首相は「イギリスを大事に思う人なら誰でも」、反人種差別デモを無視することはできないと説明。デモで浮き彫りになった「深刻な問題点」は真剣に受け止める必要があると述べた。

また、週末にロンドンで暴力行為を重ねた「極右のごろつき」も批判し、その言い分は「まったく馬鹿げている」と述べる一方、イギリスの歴史的遺産の「多くはそのまま残すべきだ」と書いた。

週末には極右活動家などがイギリスの歴史や像を守るとして対抗デモを行い、警察に暴力を振るうなどした。ロンドンではこれに絡んで100人以上が逮捕されている。

ジョンソン首相はさらに、「人種差別対策で大きく前進したと、ただ言うだけでは意味がない」と話し、委員会の設置を明言した。

「やるべきことはまだたくさんあるし、実行する。雇用や保健制度、学問など、生活のあらゆる場面で起きるあらゆる不平等を精査する、政府全体を巻き込んだ委員会が必要だ」

イギリスでは新型コロナウイルスの流行により、保健制度の不平等が浮き彫りになっている。イングランド公衆衛生庁(PHE)が先に発表した国内の新型コロナウイルスによる死者についての調査では、人種的マイノリティーの致死リスクが高かったことが明らかになった。

アメリカで黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官の暴行で死亡した事件をきっかけに、イギリスでも反人種差別デモが広がっている一方、人種差別や奴隷制度に関わった歴史人物の像が攻撃対象になっている

ジョンソン首相は、「本当に(差別を)変えたいのなら、イギリスでは民主主義的な方法を取ることができる。これは(第2次世界大戦中に首相を務めた)ウィンストン・チャーチルのおかげだ」

ロンドンのパーラメント・スクエアにある、ウィンストン・チャーチル元首相の銅像には、「人種差別主義者」という落書きがされた。ブリストルでは、地元の名士で奴隷商人だったエドワード・コルストンの銅像が台座から引きずり下ろされ、ブリストル湾に投げ入れられた。

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歴史的遺産をチェック

英紙タイムズによると、イギリスの歴史的遺産を管理するイングリッシュ・ヘリテージは、ロンドンに950個ある歴史的遺産を示すプレートについて、「問題となる」関係性があるかどうか検査を行う。また、それぞれの遺産についての追加説明をウェブサイトに掲載する方針だという。

銅像についても、追加の説明を施すのが最善策だと思っていると説明。

「我々が管理する像については、すでに記念されている人たちの物語を、美化したり言い訳したりせず、その全容を語ることが必要だ」

最大野党・労働党のマーシャ・デ・コードヴァ影の平等担当相は、首相の寄稿を批判した。

「世界的なパンデミックの中で、長年にわたって緊急対応が必要だった構造的不平等がはっきりと明らかになっている」

「そこで、首相が『文脈を変えれば(中略)被害者化や差別の意識をなくすことができる』と言うのは尊大で、首相自身と政権を救うための言葉にすぎない」

野党・自由民主党の平等担当、クリスティーン・ジャーディン氏も、委員会の設置は「歓迎すべき第一歩」だと述べた一方、「委員会の報告がホワイトホール(省庁)の棚の肥やしになってはいけない。政府は一刻も早く行動を起こすべきだ」と指摘した。

「保守党の閣僚らは、この委員会を使って、今現在できる人種差別や不正義対策を避けてはいけない。環境にやさしくない政策を破棄したり、職務質問を減らしたり、明日からできる対策がある。こうしたことが分裂をいやし、BAME(黒人、アジア人および少数民族)コミュニティーに本当の正義をもたらすかもしれない」

調査会社イプソス・モリが行った世論調査では、向こう10年でイギリスがより寛容で多様性のある社会になるかという質問に対して、「楽観視している」と答えた人が3分の2を占めた。2009年に行われた同様の調査では50%だった。

一方、真のイギリス人であるには白人でなくてはならないかという質問では、「まったく同意しない」と答えた人は55%から84%に増加した。

(英語記事 UK must do 'much more' to tackle racism, says PM