三浦瑠麗(国際政治学者)

 「コロナ政局」というようなものが日本で起こるとすれば、それは与党内で起こるのでしょう。そう思わされたのは、感染の波がいったん収まって、未知の感染症だった新型コロナウイルスに関する不確実性もだんだんと減ってきたころから、自民党の中の動きが活発化したことによるものです。

 とはいえ、現在の自民党を見る限り、政権末期につきもののレームダック(死に体)化の気配は感じられても、かつてのように明確に政権を引きずり下ろしに行く動きは感じられません。

 それは、一つには細田派(清和政策研究会)、麻生派(志公会)、二階派(志帥会)の安倍政権を支える三大派閥がしっかりと手を組んでいるからでしょう。また、安倍晋三首相から後継とみなされている岸田文雄氏が政調会長として政権と命運を共にしているからでもありましょう。

 しかし、だからこそ、でしょうか。こうして本格的な大不況時代の入り口に立ちながら、安倍政権後を視野に入れた政治家個々人の動きは、依然として危機のレベルを認識していない錯誤感が伴います。もちろん、足下での経済的損失に対処すべしという声は、与党議員の中からも大きく聞こえてきます。

 逆に、今は提案さえすれば、何もかも認められそうな気配さえ感じられます。目の前の倒産を食い止めようと誰もが立ち働いていることは否定しません。

 しかし、政権与党は少なくとも向こう2、3年の経済運営に関しては責任を負う立場です。コロナの第2波にどう立ち向かうのか。そこにおいて第1波と同じような緊急事態宣言と休業要請をしてしまってもよいのか。
安倍首相(右)に2020年度第2次補正予算案編成に向けた自民党提言を手渡した自民党の岸田政調会長=2020年5月21日、首相官邸
安倍首相(右)に2020年度第2次補正予算案編成に向けた自民党提言を手渡した自民党の岸田政調会長=2020年5月21日、首相官邸
 はたまた、同盟国やその他の国との往来はどのように再開すべきか、米中対立によるリスクにどのように対処すべきか、といった問題を話し合うべきときなのです。自民党総裁選をにらんで各種会合や立ち上げをするのもよいですが、それは根本的な問題への対処を政権に任せっきりにし、困難な課題を避けて通るようなものであってはならない、と思います。

 軒並み弱い支持しか得られていない野党を前に、政権交代を恐れず余裕綽々(しゃくしゃく)なのはまだ理解できるとしても、第2波への対応次第では、今年の実質国内総生産(GDP)がマイナス12%成長になろうかというときに、悠長な態度をとっている場合ではないと思うのです。