清義明(フリーライター)

 川べりに張りだした木造の建物にふと目をやると、びっしりと蜂の巣のような小さい入り口の店で埋め尽くされている。どこも小さなスナックや、女性一人で切り盛りしているような小料理屋だ。

 店に行ってみると、皆、苦境に喘(あえ)いでいた。ふだん弱音とは縁がないような人たちが、どうしたらいいのか分からないという。

 話をしんみりと聞いていると、本当に身につまされた。そのうち、ひょんなことから持続化給付金の話になる。ところが大半の店はこの存在を知らなかった。皆、一律で国民に10万円が給付される特別定額給付金の存在は知っていたが、中小の企業や個人事業主が主な支援対象となるこの存在は知られていなかったのである。

 なるほど、確かに特別定額給付金はテレビではよく話題になっているが、企業向けの持続化給付金はあまり触れられていない。

 持続化給付金は、政府による新型コロナウイルス対策の大規模経済支援策の目玉の一つだ。感染症拡大による影響で売り上げが減少した企業や個人事業主に、最大200万円ないし100万円を配布しようというものだ。

 安倍晋三政権による新型コロナウイルスの財政出動は、先に触れた全国民を対象とする特別定額給付金と、主に中小企業向けの持続化給付金がいわゆる「真水」の両輪になる。

 そして日本の新型コロナウイルス対策の財政支援は、国際的に見てもかなりの規模に及ぶ。これらをまとめた財政パッケージの総額は国内総生産(GDP)の約20%相当にも及ぶ。

 米コロンビア大のセイハン・エルジン教授によれば、調査した世界166カ国のうち日本の支援総額はGDP比で世界第2位だ。ちなみに1位は小国のマルタなので、実質日本は世界でも最大の財政出動をしたことになるという。

 ただ、批判者の中には、その支援規模は融資保証なども含めた額であり、直接国民には影響がないと指摘する人もいる。だが、特別定額給付金という国民全員に配布する10万円も、世界の実情を見れば、かなりの大盤振る舞いということが分かる。
特別定額給付金のオンライン申請が始まり、マイナンバーカードの取得手続きなどで混雑する大阪市浪速区役所の証明発行窓口=2020年5月11日、大阪市浪速区(寺口純平撮影)
特別定額給付金のオンライン申請が始まり、マイナンバーカードの取得手続きなどで混雑する大阪市浪速区役所の証明発行窓口=2020年5月11日、大阪市浪速区(寺口純平撮影)
 個人向けの給付金に関しては、米国だと一人当たり1200ドル(約13万円)と高額だが、それでも日本より額が多い国は限られている。韓国(1人では約3万5千円、1世帯あたりでも最大約9万円)やシンガポール(21歳以上の国民に約4万5千円)は、日本の額よりかなり少ない。

 この金額はあくまで支給されている国での比較であり、そもそも国民一人あたりの給付金がない国の方が実際には多い。社会主義国家という建前の中国には、そのような国民一律の給付金は存在しない。もちろん収益が減少した企業への納税猶予や、商品券などの配布、失業者への手当、ロックダウンによる休業補償などはある。

 それでも、どちらというと社会主義国家であるはずの中国の方が個人による自助努力が求められる。