中村佳美(政治SNSアナリスト)

 7月5日投開票の東京都知事選は東京五輪・パラリンピックを控え、「東京大改革宣言」を掲げた小池百合子知事の4年間の都政運営に対する審判の場になるはずでした。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、小池氏のコロナ対応に注目が集まる中で、自民党本部と公明党、立憲民主党は独自候補の擁立を断念しました。

 6月12日に出馬表明した小池氏が政党の推薦を受けないことを表明したこともあり、自民は自主投票、公明は小池氏の実質支援を決め、一方、立民は元日弁連会長の宇都宮健児氏を共産、社民とともに支援することを決定しました。

 日本維新の会は元熊本県副知事、小野泰輔氏の推薦を決めています。そして告示前々日の15日には、れいわ新選組の山本太郎代表が東京五輪の中止を公約に掲げ、出馬表明しました。

 中でも、思わぬ展開を見せたのが、実業家の堀江貴文氏の出馬説が報じられたことです。堀江氏は新著『東京改造計画』(幻冬舎)に、37項目500ページに及ぶ「マニフェスト」を盛り込みました。

 さらに、以前から親交が深く、都知事選にも出馬するNHKから国民を守る党の立花孝志党首が5月25日に、堀江氏の愛称を使った政治団体「ホリエモン新党」を設立、自ら代表に就きました。ただ、その立花氏は6月16日、堀江氏の秘書、斉藤健一郎氏がホリエモン新党の公認候補として出馬することを発表しました。このような状況でも、「アフターコロナ」で国民から求められる政治家像が変化していく中で、インターネット上で多くの期待が寄せられていました。

 堀江氏が会員制交流サイト(SNS)を使って発信する言動は、メディアなどを通して常に注目され、話題となってます。そんなネットから高い支持のある堀江氏が、今回の都知事選に出馬した場合、得票力や選挙戦の展開方法に注目が集まったことでしょう。

 そこで、今回、慶応大大学院政策・メディア研究科の小野塚亮氏に協力いただき、堀江氏と現職の小池氏のフォロワーにおける属性を分析しました。本稿では、この結果をもとに、堀江氏のSNSによる情報発信が、都知事選に対してどのような影響が及ぶのか考察してみたいと思います。

 まず、堀江氏と小池氏のSNSコミュニティーからファンの属性の分析を行うために定量的調査を試みました。今回は、小野塚氏が開発したツイッターAPI(外部システムで連携しやすくする技術仕様)を用いて構築したシステム『あなたが好きな人は何が好き?』を使用して、SNS分析を行いました。このシステムは、自分のツイートに定期的に「いいね」している人が、誰で、どのような人なのか、その人が自分以外に他にどんな内容に興味を持って「いいね」しているかを図で示してくれます。
衆院法務委員会に参考人として意見陳述する実業家の堀江貴文氏=2015年7月(酒巻俊介撮影)
衆院法務委員会に参考人として意見陳述する実業家の堀江貴文氏=2015年7月(酒巻俊介撮影)
 この分析によって、ファンが自分の何に注目しているかを知ることができるとともに、自分のフォロワー層の属性を分析できます。これまでに、自分のことを好きな人が誰なのかを調べるマーケティング手法はたくさんありました。今回の分析では、その好きな人がどのようなフォロワー属性であり、どのようなものを好むかまでを、ツイッターを用いて抽出を行うことが新たに可能になりました。

 なお、分析にあたっては、違いをより分かりやすくするために、現職の小池氏のSNSと比較しながら進めました。

 今回、このシステムを使用して分析を行うにあたり、以下の四つの問いを明らかにします。

(1)「いいね」してくれているユーザーのうち、何%が実際の堀江氏、小池氏のフォロワーであるか
(2)両氏を好きな人(ファン)の属性は何か
(3)両氏の投稿以外、どのような内容に興味を持って「いいね」しているか
(4)ファンの集中度はどのくらいか

※ここでのファンの定義は、3回以上リアクションしている人たちのことを指す。1ツイートあたり取得できるリアクション数には上限があり、リツイートは100件、「いいね」は26件までのみ取得できることが前提条件


 また、2人のツイッターのフォロワー数を確認しておきましょう。

堀江氏:610フォロー/351万6789フォロワー
小池氏:596フォロー/84万7427フォロワー
※5月25日時点


 まず、自分の投稿に「いいね」してくれているユーザーの何%が、実際に自分のフォロワーなのかを分析しました。5月19~28日の10日間で、小池氏のツイートに3回以上リアクションしている92人中8人が非フォロワーで、堀江氏の場合、83人中2人は非フォロワーでした。