この定量的結果をもとに、堀江氏が従来のネット選挙活動を行う候補者とどのような点が違っていて強みなのか、そうした違いが都知事選ではどのように活きてくるのか、考察していきます。

 堀江氏のSNSスタイルの核を担うのは、社会経済から芸能まで、世の中のありとあらゆ出来事や事件に対して切り込んでいく独自の「俺論」です。堀江氏のような能力や肩書を同時に有する人は、日本にはほとんどいません。

 誰もが思いつかないような視点から言語化を行い、炎上させることで自身のツイートがさらに拡散され、注目を集める仕組みを意図的に作り上げます。問題を指摘して攻撃することで、具体的な問題点に目を向けさせるような発信が多く、ユーザーが自分と同じようなポイントに問題を感じ、怒りをぶつける代弁者だということを印象付けようとしていたと見受けられます。

 例えば、小池氏は5月20日、都知事選への出馬意欲が報じられた堀江氏について、記者団から感想を求められ「特にございませんけれども、まあ賑(にぎ)やかなこと、という感じ」と微笑を交えて語りました。これに対し、堀江氏はすかさず反応し、小池氏が取材に答えるニュース動画を自らのツイッターに貼り付け「コロナ危機利用してるから余裕だな」とツイート。対抗馬として意識しているかのような投稿がメディアでも取り上げられていました。

 ネット上で名前を検索し、自分自身への評価を確認するエゴサーチを行い、自身に関する投稿を引用リツイートしている姿を見ても、直接的に相手に議論に持ち込むことは、なかなかできないことであり、他の候補者にない点です。小池氏の投稿するツイッターに反撃する形で、堀江氏が引用リツイートを行うことで、さらにネットが白熱していく可能性もあったでしょう。

 従来の候補者のネット選挙においては、対抗馬に直接的な議論を持ちかけることは避けており、あくまで自分のコミュニティーの中で収まっていました。こうした何を言い出すか分からない、目が離せない、注目を集める手段として発信しているのが堀江氏のスタイルです。

 このスタイルは、一部のユーザーから、米国のドナルド・トランプ大統領を連想させるかのような「本音で語る改革者」に映るかもしれません。トランプ氏のSNSスタイルは、過激な表現や怒りを代弁する演説を行い、物議を醸すことでユーザーたちがより反応します。

 こうしたメッセージ発信がニュースのヘッドラインを飾り、賛成派も反対派も関係のない人も、トランプ氏を意識せざるを得なくなり、独特のループにハマっていくのです。日によっては、「トランプ氏は、本日はツイートしていません」とテレビで取り上げられるほど、番組コンテンツとしても注目されていました。

 このように「何を言い出すか分からない」「目が離せない」というのが、トランプ氏がSNSで作り出した自らのイメージで重要な要素の一つだったのです。トランプ氏は、かつて米CBSテレビのニュース番組の中で、「自身がフェイスブックやツイッター、インスタグラムなどの各アカウントで大量のフォロワーを獲得していたことから、悪意ある情報が流されてもSNSが反撃の手段となり、選挙戦に勝利することができた」と答えています。

 さまざまな物議を醸した「トランプスタイル」こそが、大統領選の勝因であったことを自ら示唆したわけです。こうしたトランプ氏のスタイルに近い堀江氏も、自らのアカウントで大量のフォロワーを獲得していることで、既存メディアなどから悪意のある情報が流された場合でも、自らの主張を数多くの人たちに直接伝える「反撃の手段」としてSNSを活用しています。
米ホワイトハウスで話すトランプ米大統領(中央)=2020年4月(AP=共同)
米ホワイトハウスで話すトランプ米大統領(中央)=2020年4月(AP=共同)
 今回の分析結果においても、ファン集中度の高さから熱烈的ファンが多く集中していることが証明されたほか、人生、仕事、勉強、ビジネス、エンジニアなど、特定領域のファンの属性が高いことにも納得がいきます。また、今回の立候補に期待を寄せられている点には、実業家として公約に対する具体性が高く、デジタルリテラシーが高いところも注目を集めています。満員電車の値上げ、江戸城再建、大麻解禁、東京都のオール民営化など37項目を盛り込んだ東京改造計画が発表されています。

 従来の政治家なら一見非常識と思われるところに踏み込んでいても、堀江氏のキャラクターだからこそ、正直や素直という印象を与えています。そうした様子が支持者にとっては本音で語りかける改革者のように見えているのかもしれません。

 一方で、堀江氏への批判として、「選挙を混乱させるな」「都知事選を宣伝媒体にして過激なことするつもりなのか」「N国の取り巻き」「人柄が信用できない」「弱者の気持ちが分からない」との声も多く上がりました。確かに、政治家は情報発信だけでなく、議会や政党をはじめとするステークホルダー(利害関係者)に対して粘り強く説得するコミュニケーションが必要であるため、公職経験を求められる一面もあります。

 しかし、政治家は落選すれば無収入になってしまうことから、たとえ国民や都民のことを考えていても大胆な政策はできない現実があり、資産活用のアイデアも少ないのも事実です。堀江氏は『東京改造計画』でも「僕は空気を読まない。媚びない。権力にもメディアにも都民にもいい顔をしない。大いに批判され嫌われるであろう。でも、それでいい。誰かが強い意志をもって強い提言をしなければ東京は変わらない。コロナ時代の新しい首都のカタチを皆さんと一緒に考えていきたい」「東京は政治屋たちの私物ではない」と語っています。