また、候補者の中には、公示日を迎えてからアカウントを開設し、選挙が終われば更新をストップする人も多いです。今回の選挙だけに限らず、国民は政治家の日頃からの情報発信の内容とともに、発信している姿勢を見ていることも忘れてはなりません。私たち有権者にとって、政治家のSNSはメディアのフィルターを通さずに生で政治家が考えていることにアクセスできる「回路」なのです。

 そして、SNSを選挙で活用するにあたって一番気になる部分が、その効果性です。限られた時間である選挙戦では、意味のある広報戦略が常に求められています。

 これまでに、ネットとリアルの合わせ技を必要とする海外の選挙においては、選挙結果に対して無視できない影響を与えていると示唆されてきました。米大統領選でのネット選挙キャンペーンの代表例として、バラク・オバマ前大統領が挙げられます。

 しかし、2008年と12年の大統領選でオバマ陣営の草の根運動に参加した明治大の海野素央教授によれば、実際オバマ氏の強さの源泉はSNSではなく、地上戦にあったといいます。著書『オバマ再選の内幕』(同友館)で海野氏は、空中戦とは、あくまで地上戦を後方から支援する存在にすぎないと指摘しています。戸別訪問が許されている米国の選挙で、オバマ氏は誰よりも地道な戸別訪問に力を注ぎ、再選の流れをつくったというのです。

 オバマ氏は、もともとシカゴの貧困地区を歩き回る「コミュニティー・オーガナイジング」と呼ばれる草の根運動をしていた政治家でした。「困っていることはありませんか」「このあたりにバス停は必要ですか」「家庭教師は必要ですか」「有権者登録のやりかたはご存じですか」「アパートを建てた方がよいですか」といったことを上院議員になる前から聞いて回っていたと海野氏が明らかにしています。

 こうした空中戦について、組織票中心の選挙になりやすい日本では、SNSの活用効果を低く見積もる研究が多く見られます。ネットだけで選挙に勝つことは難しいため、地上戦と空中戦を融合させることが必要であり、バーチャルの接触だけでは、支持者をつくれないのが現実でしょう。

 しかし、今回のような特定のファンが既に集中している堀江氏が出馬した場合には、事前のネット上でのバーチャル接触によって、その後のリアルでの接触の価値が上がる可能性は高かったと考えられます。つまり、直接的に得票数に結びつくエビデンス(根拠)は定かでなくも、人を動員したり、投票を呼びかけたりする「得票力」として化ける可能性が十分にあったといえるのです。

 このような効果を十分に証明するためには、今回の定量的データを混合的に取り入れて検証していく必要性があります。日本も米国のようにビッグデータ解析・有権者名簿の活用、それにネット選挙運動が連動し、政治家と有権者が双方向でコミュニケーションを行う変革が求められていくことでしょう。

 最後に、今回の分析領域であるインターネット論と政治学の横断的研究に関して、日本は近代的分野のために未発達な理論が多く、十分な指標となるものも少ないです。しかし、国民が安心して政府の情報を受け取れる環境を整備し、デジタル社会に対応していくためには、選挙や政治の現場においてのデジタル活用促進の必要があると考えています。

 横断的研究を進めている筆者としても、現場での戦略にも活かせるように、データからエビデンスを導き出し、混合的に研究を進めていくことで、国民と政治の距離が縮まり、より対話が増えていくための指標になれればと考えています。
東京都庁(ゲッティイメージズ)
東京都庁(ゲッティイメージズ)
 また、今回分析したSNSの有効性だけではなく、その脅威についても、私たちは冷静に考えていかなければなりません。ネット世論が政治に与える影響が見受けられる問題が相次ぐ昨今、先月の「#検察庁法改正案に抗議します」ツイッターデモが政治に与えた意識は衝撃的でした。

 まさに、これまで観客席から見守っていた多くのユーザーが、次々に舞台に現れた瞬間です。日本は代表民主制のため、自分たちの声を議会に届けるためには一人ひとりが持つ1票を候補者に託し、政治の現場に送り出すことで主張してきました。

 たとえ国民と政治のズレを感じても、デモ集会やネット上で声を上げることしかできない中で、今回のツイッターデモの影響を受けて各メディアがニュースに取り上げました。つまり、SNSと政治が脅威的な親和性を持ち、集まった有権者の声が世論を超えて政治を動かす指標になったということです。

 しかし、この脅威が示唆される一方で、流れを変えることができるという国民の希望にもなったはずです。緊急事態宣言が発令された後で、日本の首都東京の舵を託せる候補者を選ぶ重要な選挙になることでしょう。

 先述のように、政治家のSNSは、私たち有権者にとって生で政治家が考えていることにアクセスできる回路です。ぜひ、自分の一票の投票先を決める判断材料として、候補者のSNSにアクセスし、候補者の頭の中を確認して下さい。