2020年06月20日 12:17 公開

ブラジルで19日、新型コロナウイルスの感染者が100万人を突破した。感染者数が100万人を超えたのは、アメリカに続いて2カ国目となる。

ブラジル保健省によると、この日までに確認された感染者は103万2913人。また、過去24時間の感染者数が過去最多の5万4000人以上だったと発表した。

保健省は、今週初めに各州からの報告に不備があったため、感染者数が急激に増えたと説明している。

一方、1日当たりの死者が4日連続で1200人を超えており、全体で4万9000人近くが亡くなっている。

ブラジルでは検査の実施件数が不足しており、実際の感染者数や死者数はこれよりも多いとみられている。専門家は、感染のピークはまだ数週間先だとみている。

特に貧困地域や先住民コミュニティーなどで感染が広がっているという。

感染対策をめぐっては、極右のジャイル・ボルソナロ大統領の対応が大きな批判を浴びている。ボルソナロ大統領は当初から新型ウイルスの脅威はたいしたことがないとし、「ちょっとしたインフルエンザ」のようなものだと述べていた。また、感染拡大を防ぐために厳しい移動の制限などを敷いた州知事や市長らと激しく対立している。

ボルソナロ氏はまた、新型ウイルスそのものより、こうした制限による経済的打撃の方が大きいと主張。これまでに、大統領の方針に反発して保健相が2人、辞任している。

<関連記事>

ブラジルでは全国的なロックダウン(都市封鎖)が行われていない中、各州や市が独自の感染対策を行っている。数カ月にわたる制限の後、流行はなお収まっていないものの、一部では制限が緩和され始めている。

一部の地域では、保健システムが感染拡大に対応できずにいる。先住民コミュニティーなど適切な治療へのアクセスが難しい遠隔地で感染が急速に拡大するなど、なお懸念材料がある。

一方で、経済活動の再開を願う声も広がっている。

経済アナリストからは、ブラジルでは今年6~8%のマイナス成長となり、数百万人が失職する恐れがあるとの予測が出ている。ブラジル政府はパンデミックの影響を受けた人を対象とした一時的な支払い制度を導入したものの、多くの市民が貧困状態になると予想されている。

ボルソナロ大統領の対応とは

ブラジルでは新型ウイルスが非常に政治的な問題となっている。世界保健機関(WHO)などが提唱する社会的距離などの科学的アドバイスをボルソナロ大統領が拒否したことが、ブラジルの被害悪化につながったと、複数の専門家が指摘する。

ボルソナロ氏は当初、新型ウイルスの脅威は誇張されていると繰り返し主張。集会は危険だという保健当局の忠告を無視し、ロックダウンに反対するデモにも参加していた。

また、厳しいロックダウンを敷いた州知事は、政府に対抗して政治的利益を上げようとしているのだと批判した。

さらに、感染者に対して抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンの使用を強く推奨していた。この薬については、WHOが致死率を下げる効果がないと指摘している。保健相が相次いで辞任した後、現在は公衆衛生での経験が全くない軍幹部が、政府の新型ウイルス対策本部を率いている。

今月初めには、過去24時間の感染者と死者の数だけを公表するとして累計データをウェブサイトから削除。この措置は検閲に当たるなどと大きな批判を浴び、最高裁判所が再公開を命令した。

こうした中、ボルソナロ氏自身も政治的危機に直面している。現在、政治的利益のために警察に介入した疑惑で捜査を受けているほか、最高裁判所は別の2案件でボルソナロ氏の仲間を取り調べている。

世界で現在、最も感染者が多い国はアメリカで、ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると約222万人。死者は12万人近くに上っている。世界全体の感染者数はこれまでに864万人を超え、死者数は約46万人。これまでに423万人以上が回復しているという。


<解説>トランプ米大統領との共通点 ――ケイティー・ワトソン南米特派員

ジャイル・ボルソナロ大統領は、以前からドナルド・トランプ米大統領と、その政治手法を称賛してきた。それぞれの国でのパンデミック対策をはじめ、この2人には共通点が多い。アメリカの感染者数や死者数は衝撃的だが、ブラジルも恐ろしい水準に達している。誰も参加したくないクラブの名誉会員といったところだ。

ブラジルでの感染者急増は、報告の不備が原因とは言え、感染がまったく抑制できていない実態を物語る。しかもよりによって、大都市が経済活動を再開し、大勢が職場に戻っているこのタイミングでの急増だ。

ブラジルでは長い間、ボルソナロ氏と各州の知事が対立していた。州知事らが厳しい隔離政策を敷いたことで経済が打撃を受けると、ボルソナロ氏は怒っていた。

しかし流行が始まってから3カ月がたち、各州知事に経済再開の圧力をかけているのは、今や大統領だけではないようだ。数百万もの住民が生活に困り、失業する中、何らかの「日常」に戻りたいという願いが強くなっている。しかしこれは危険なやり方に思える。ブラジルはまだ、感染流行のピークを迎えていないのだ。


(英語記事 Hard-hit Brazil passes one million virus cases