2020年06月21日 10:33 公開

米ワシントンの連邦地裁は20日、ジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が在任中のことを書いた回顧録の差し止めを求めていたトランプ政権の訴えを棄却した。

米司法省はボルトン氏の回顧録の内容は、適切な精査を受けていないと主張していた。

ワシントン連邦地裁のロイス・ランバース判事は、政府が「出版差し止めによって、回復不可能な損害を防げるとは立証できなかった」と述べた。

一方でボルトン氏については、米国の国家安全保障を「賭け」、すでに「国家を危険にさらし」ているとした。

「The Room Where It Happened」(それが起きた部屋)という題の回顧録は、数十万部が印刷、配送されており、今月23日に発売が予定されている。

回顧録には、今年11月の大統領選で再選するという欲に意思決定が支配されたドナルド・トランプ大統領について、赤裸々に綴られている。

トランプ氏はこの書について、「うそと作り話で構成されている」と主張している。

地裁の判断は

米司法省の弁護団は、著書に機密情報が含まれていないと確認するための、出版前の原稿チェック義務にボルトン氏が違反したと主張した。

ボルトン氏の弁護団はこの主張をはねつけた。原稿は徹底的に精査されたもので、トランプ氏は単に内容が気に食わなかっただけだと主張した。

10ページにおよぶ判決文の中で、ランバース判事は、ボルトン氏は結論が出る前に出版前の精査プロセスを中断し、「機密保持契約の義務に違反し、機密情報を開示することで国家安全保障を脅かした可能性が高い」としたが、米政府の出版差し止め請求は棄却した。

「国家情報当局の最終承認を得ることなく、進んで本を出版しようとしていることから、ボルトン氏は実際に回復不能な損害を国家に与えているかもしれない」

「しかし このインターネット時代では、ほんの一握りの部数が出回るだけで、国家機密は取り返しがつかないほど損なわれる可能性がある。本を手にしたのがたった1人でも、熱意があれば本の内容を近所のコーヒーショップから世界中に公開できてしまう。本書はすでに報道機関をはじめ、世界中に何十万部も配布された。危害はすでに生じてしまった。現状は回復できない」

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この決定の直後、トランプ氏はボルトン氏が「機密情報を(大量に)公開し、法律を破った」とし、「ボルトンはこの行為に対する非常に大きな代償を払わなければならない」とツイート。「こんなこと2度と起きてはいけない!!!」とした。

その後トランプ氏は、地裁の決定について、「ボルトンに法廷で大勝した。言うまでもなく、この本はすでに大勢やメディアにリークされていたので、高名な判事には止められなかった。しかし機密情侵害について、強力で説得力のある声明と判決が下された……」とツイートした。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1274366494185570304


ボルトン氏の弁護人、チャールズ・クーパー氏は、地裁が政府の出版差し止め請求を棄却したことを歓迎した。

一方で、ボルトン氏が政府との契約上の出版前義務を完全に順守しなかったとする結論には反論した。

「経緯の全容はまだ語られていないが、いずれ明らかになる」と付け加えた。

ボルトン氏の回顧録を出版する米サイモン・アンド・シュースターは、「我々は、検閲と出版の事前制限に対する合衆国憲法修正第1条の強力な保護を、地裁が支持したことに感謝する」としている。

「とっぴで、驚くほど無知な」指導者

ボルトン氏は2018年4月にトランプ大統領の補佐官(国家安全保障問題担当)に就任。イランや北朝鮮、アフガニスタンなどとの主要な問題の対処をめぐってトランプ氏と対立し、翌年9月に辞職を発表した。

ボルトン氏は回顧録の中で、トランプ氏を「とっぴで」、「衝動的で」、「驚くほど無知な」指導者だとしている。

ほかにも、真実かどうかは確認できないが、個人的な会話に基づく主張も含まれている。

ボルトン氏によると、トランプ氏は大統領再選を目的に、中国の習近平国家主席の支援を取り付けようとし、「米農家の票と、中国が大豆と小麦の購入を増やすことが、選挙結果を左右すると強調した」という。

また、新疆ウイグル自治区での収容所建設は「正しいこと」だと述べたという。

トランプ氏は「実質的に、お気に入りの独裁者に個人的な便宜を図るために」犯罪捜査に介入することを厭わず、トルコの企業が関与した事件について、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領を進んで援助していたとしている。

ほかにも、ヴェネズエラ侵略は「クール」で、ヴェネズエラは「実際はアメリカの一部」だと述べたという。

イギリスが核保有国だと知らなかったり、フィンランドはロシアの一部なのかと側近に尋ねたこともあったと書かれている。

(英語記事 Judge rejects Trump bid to ban ex-adviser's book