
2020年06月22日 12:52 公開
イタリアの高等衛生研究所(ISS)は18日、昨年12月の時点で新型コロナウイルスが同国北部に存在していたとする調査結果を公表した。同国で初の感染者が確認されたのは今年2月で、それよりも2カ月も前に新型ウイルスが到達していたということになる。
ISSによると、ミラノとトリノで昨年12月18日に採取された下水から、新型コロナウイルスの遺伝子の痕跡が見つかったという。
この調査結果は、考えられているよりもずっと早い段階から、新型ウイルスが広まっていた可能性があるとする、ほかの国々での証拠を補強するものとなった。
中国当局は昨年12月末時点で初の感染者を確認していた。
イタリアでは、北部ロンバルディア州コドーニョで、海外からの入国者以外の感染が初めて確認された。コドーニョは2月21日に封鎖され、「レッドゾーン」に指定された。ロンバルディア州のほかの9つの町と、近隣のヴェネト州も続いて封鎖され、3月初旬には全国的なロックダウン(都市封鎖)が敷かれた。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、イタリアではこれまでに3万4600人以上が死亡している(日本時間22日正午時点)。
イタリア北部で下水を採取
ISSの科学者たちは、イタリア北部の複数の下水処理場で昨年10月から今年2月にかけて採取した40の下水サンプルを調査した。
ISSの水質専門家ジュゼッピーナ・ラ・ローザ氏によると、昨年10月から11月までのサンプルからはウイルスの痕跡は発見されず、この時点ではまだウイルスが同国に到達していなかったことがうかがえる。
北部エミリア・ロマーニャ州ボローニャの下水については、今年1月のサンプルから新型ウイルスの痕跡が見つかっているという。
今回の発見は、科学者たちがイタリア国内でどのように新型ウイルスが広がり始めたのかを理解するのに役立つ可能性があると、ラ・ローザ氏は述べた。
一方で、この研究は「イタリア国内でのエピデミック(感染流行)の発展につながった主な感染連鎖が、これらの最初の感染から生じたものだと自動的に暗示する」ものではないとした。
下水監視でウイルスの早期発見も
ISSは、臨床的に感染者が確認されるよりも前にウイルスの存在を知らせてくれる、早期発見ツールとして下水を利用する「戦略的重要性」が、今回の結果で確認できたとした。多くの国では現在、この技術を利用している。
ISSによると、今年後半に全国的な下水監視ネットワークを構築することを視野に、7月に観光地の下水を監視する試験的プロジェクトを開始する予定という。
今年5月、フランスの科学者たちは、昨年12月27日にパリ近郊で肺炎の疑いで治療を受けた患者のサンプル検査で、新型ウイルスに感染していたことが明らかになったと発表した。
こうした中、スペインではある研究で、1月中旬にバルセロナで採取された下水から新型ウイルスの痕跡が見つかった。つまり、同国で初の感染者が確認されるより約40日も前にウイルスが存在していたことになる。
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