2020年06月23日 10:44 公開

ダニエル・デ・シモーン、アリ・ウィンストン(BBCニュース)

ネオナチの過激派組織がアメリカや欧州などで、ティーンエイジャーの育成や勧誘を密かに進めている実態が、複数の秘密録音で明らかになった。

米人権団体「南部貧困法律センター」(SPLC)が入手した音声の一部は、BBCの調査報道番組「パノラマ」も確認した。

ネオナチ団体「The Base」の幹部たちが若い志願者を面接したり、若者を過激化させる方法を話し合う様子が記録されている。

米連邦捜査局(FBI)は、「The Base」が世界中の白人至上主義者を団結させ、人種戦争を扇動しようとしているとしている。

The Base創設者は、アメリカ人のリナルド・ナザロ氏(47)。BBCは今年初め、ナザロ氏がロシア・サンクトペテルブルクの高級アパートから同組織を指揮していることを突き止め、報道した。

暗号化アプリを使う電話会議での面接は、一定のパターンに沿って行われる。メンバー候補者たちはまず、ナザロ氏から経歴や民族性、過激化の経緯、武器の使用経験について質問されてから、上級メンバーたちからの質問を受けていた。

候補者たちは、アドルフ・ヒトラーの「わが闘争」などの本を読んだことがあるか質問されていた。また、人種戦争の加速を予測し、それを追い求め、争いや社会的崩壊への準備を要求する、同団体の白人至上主義のイデオロギーを習熟するよう促されていた。

ナザロ氏が通話中にほかの過激派グループのメンバーを歓迎する声も確認できる。

偽名を使い、様々な度合いのイデオロギー認識を示す若い志願者たちは、オンライン動画やプロパガンダを通じて過激思想を持つようになったと話している。

通話が終わると、上級メンバーは対面審査の手配の前に、候補者の可能性について話し合った。

社会の崩壊

The Baseが西側諸国の軍の兵士を募り、戦術や武器の使用に関する訓練方法を利用しようとしていたことが、音声から明らかになった。

BBCの調査によると、ナザロ氏はかつてFBIの分析官や、米国防総省の請負業者として働いていたとされる。ナザロ氏は1人の10代イギリス人に対し、社会崩壊の考えは「指針となる哲学」だと教えていた。

ヨーロッパの10代若者は、「我々が活用できる権力の真空状態」が実現するのなら、こうした崩壊はたとえ地方レベルであっても望ましいことだと教えられていた。

ある少年は、「我々はまず、できるだけ多くの場所に2人~3人の小隊をつくることを目標にしている」、「イギリスにはこれを実行できる可能性が大いにあると考えている」と伝えられた。

面接後の話し合いの中で、ヨーロッパ出身の17歳について、1人の年配男性が思想体系の「形成」に言及すると、ナザロ氏は「思想的には少し手を加える」必要があるが、「間違いなく正しい方向に向かっている」と述べた。

イギリス人のティーンエイジャーについては、ナザロ氏はおそらく「思想的に成熟」する必要があると示唆した。

米人権団体「南部貧困法律センター」(SPLC)の上級リサーチアナリストのキャシー・ミラー博士は、これらの音声について、この過激派世界を「垣間見る非常に珍しい」機会だとし、「過激化のための特異な道筋はみられなかった」と話す。

ミラー氏は、The Baseに応募した人たちは様々なバックグラウンドを持っていたと指摘する。

「多くは全く普通の人だという事実、それ自体が重要なことなのだと思う」

「志願者にはテロリストになりたいと思ったり、過激派イデオロギーに惹かれたりするような特性はなかった」

「政治的に深く二極化した社会を反映していると考えるのが妥当だと思う」

米ジョージア州では現在、The Baseのメンバー3人が反ファシズムのカップル殺害を計画したとして共謀罪で訴追されている。

「The Base」は、現在は存在しない「Iron March」と呼ばれるウェブフォーラムによってつくられた、国際的ネオナチ・ネットワークから出現した地下組織としては一番新しい団体だ。

ほかには、禁止団体に指定されているイギリスの「National Action」や「Sonnenkrieg Division」、FBIの全国的な捜査対象となっているアメリカの「Atomwaffen Division」などがある。

BBCの調査では、The Baseの上級メンバーで、10代イギリスでのテロ行為に関する起訴と関連のある後継オンラインフォーラムを作成した男について、身元が判明している。

米カリフォルニア州・南カリフォルニア出身の、無職のマシュー・バカリ氏(25)は、「マタイアス」という偽名で、悪名高いウェブサイト「Fascist Forge(ファシストのとりで)」を運営している。このサイトでは、テロ行為や性的暴力が公然と奨励されている。

The Baseの電話面接でもバカリ氏の声は確認できる。同氏は「Fascist Forge」でThe Baseのことを宣伝していたが、捜査当局の注目を集めたため、今年初めにオフラインになった。

イギリスでテロ攻撃を計画して昨年有罪判決を受けたダラム出身の16歳少年の事件で、Fascist Forgeは中心的役割を果たしていた。

同サイトの別の若いイギリス人メンバー2人(うち1人は15歳)は別々に、少年裁判制度に基づき25件のテロ犯罪で訴追されている。

バカリ氏はBBCの取材チームが質問をしようと自宅を訪問した際、寝室から出てくるのを拒んだ。

バカリ氏とナザロ氏には、2人にとって不利な証拠を提示した複数の手紙を送っているものの、返事はなかった。

(英語記事 Teens groomed by neo-Nazi militant group