私の実体験から、選挙でいかに不適切な金銭が動くことが多く、慣例となっているかが透けて見えることだろう。それを裏付けるのが、私が2回目となる2014年の衆院選に出馬した際の出来事だ。

 同期の若手衆院議員であった村上政俊氏が、維新の党幹事長だった松井一郎現大阪市長から「支えてくれた大阪府議会や大阪市議会の地方議員の心をつかみ切れないのに、国民の心はつかめない」などとめちゃくちゃな言いがかりで公認を剥奪(はくだつ)されたのだ。代わりの公認候補となったのが、現在の吉村洋文大阪府知事である。

 この松井氏の言葉からも分かるように、「国会議員の選挙に出たければ、政治理念で賛同を得るのではなく、その選挙区の地方議員にゴマをすり、選挙に動いてもらうのが当然」という悪しき慣例が政治の世界でまかり通っている。繰り返すが、与党の重鎮議員は例外だ。

 昨年4月に行なわれた統一地方選の前後で、克行氏が地元政界関係者に20万~30万円の現金を渡したというのも、上述した悪しき慣例の一部であろう。現金は「陣中見舞い」や「当選祝い」名目だったとされるが、そんなもの、阿吽(あうん)の呼吸で、どのようなお金か政治関係者なら一瞬でピンとくる。地獄の沙汰もなんとやらだ。維新の会の松井氏が発言した「心をつかみ切るもの」が何かは、これまでの私の連載をお読みの皆さんならピンときてくださるだろう。

 このような環境下で行われる選挙に加え、案里氏の選挙区事情を鑑みれば、今回の買収劇も「なるほど」と思わなくもない。だが、そろそろこの負の慣例を断ち切っていかねばならない。

 しかも、今回は自民党から支出された資金が買収の原資とされており、そもそも税金だ。異例とも言われるほどの多額の現金が選挙買収に使われているとすれば看過できないし、コロナ禍によって困窮極める生活に陥った国民からすれば、許し難い行為であろう。
広島市のホテルで開かれた政治資金パーティーで、ステージに立つ河井克行容疑者(右)と、誕生日を迎えた妻の案里容疑者=2019年9月23日
広島市のホテルで開かれた政治資金パーティーで、ステージに立つ河井克行前法相(右)と、誕生日を迎えた妻の案里参院議員=2019年9月23日
 今回の買収劇は金銭を譲渡した河井夫妻だけでなく、それを授受した側も公選法違反罪に問われる。公選法第1条では、次のように記載されている。

 この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。

 ぜひとも検察には、金銭を授受した地方議員や選挙関係者全員を立件していただきたい。そしてこれまで慣例として行ってきたことが、国民の権利を守るための法律をいかに踏みにじっているかということを、政治家にたたき込んでほしい。

 そうしなければ、無垢(むく)な一票を信じて投じる有権者が、いつまでたっても報われない。