2020年06月25日 11:46 公開

新型コロナウイルスの新しいワクチンの臨床試験がイギリスで始まった。インペリアル・コレッジ・ロンドンのロビン・シャトック教授らが率いる試験の一貫で、今後数週間で約300人を対象に実施される。

このワクチンは複数の動物実験で、安全性や、効果的な免疫反応を引き起こすことが示されている。

今回の第1段階の後には、6000人を対象とした別の臨床試験が今年10月に予定されている。

インペリアル・コレッジ・ロンドンのチームは、2021年の早い時期からイギリスや海外でワクチンを配布できるようにしたいとしている。

<関連記事>

世界中では約120のワクチンの開発が進められている。英オックスフォード大学の専門家たちはすでに臨床試験を開始している。

新しいアプローチ

多くの従来のワクチンは、弱体化させたウイルスや改変したウイルスなどがもとになっている。しかし今回のワクチンは新しいアプローチに基づいたもので、遺伝子のRNA(リボ核酸)を使う。

筋肉に注射すると、RNAは自己増殖し、新型ウイルスの表面にみられるスパイクタンパク質のコピーをつくるよう、体内の細胞に指示を出す。

この方法で、COVID-19(新型ウイルスによる感染症)を発症することなく新型ウイルスを認識して戦うための免疫システムを訓練できるという。

シャトック教授は、「我々はゼロからワクチンを製造し、わずか数カ月で臨床試験に持ち込むことができた」と述べた。

「我々のアプローチがうまくいって、ワクチンがこの病気を効果的に防御できれば、将来的なアウトブレイク(大流行)への対応方法に革命をもたらす可能性がある」

この研究の主任研究員、カトリーナ・ポロック博士は、「参加者に大きな免疫反応がみられるだろうと、慎重ながらも楽観的に感じられなかったら、私はこの臨床試験に取り組んでいなかっただろう」と付け加えた。

「前臨床データは非常に期待がもてるものだった。感染から保護しておきたい免疫反応である中和抗体応答は確認できているが、このワクチンを評価するにはまだ道のりは長い」

この研究は英政府から4100万ポンド(約54億5500万円)の資金提供を受けている。ほかにも500万ポンド(約6億6500万円)の寄付が寄せられている。

「ウイルスを倒すのに協力したくて志願」

金融業界で働くキャシーさん(39)は、インペリアル・コレッジ・ロンドンの臨床試験に参加している最初のボランティアの1人だ。

新型ウイルスとの戦いの一端を担いたくて志願したという。

「自分に何ができるのかあまりよく分かっていなかったけど、これが私にできることだったと分かった」

「それに、ワクチンができるまで日常に戻れる可能性は低いことを理解したことで、ワクチン開発の一端を担いたいと思った」

こうした中、ケンブリッジ公爵ウィリアム王子はオックスフォード大学の臨床試験に参加しているボランティアたちと、オックスフォード市内のチャーチル病院で面会した。

ウィリアム王子はボランティアに対し、「みなさん全員が参加しているのは、信じられないくらい胸が躍る、非常に待ち望まれたプロジェクトだ。だからみんなが心を奪われている」と述べた。

初日の被験者は1人だけ

BBCのファーガス・ウォルシュ医療担当編集委員によると、すべての臨床試験は安全性のリスク軽減のために慎重に、ゆっくり開始される。オックスフォード大学で4月に臨床試験が開始された際には、初日に接種を受けたのはボランティア2人だけで、1週間以内に100人に接種された。

これに対して、インペリアル・コレッジ・ロンドンの臨床試験では初日には1人だけにワクチンを接種する。その後48時間ごとに3人に接種し、徐々に被験者を増やしていく。

また、1回分の投与量を使用するオックスフォード大学とは異なり、インペリアル・コレッジ・ロンドンの臨床試験では4週間の間隔をあけて、2回の接種を行うという。

シャトック教授らのチームは、慎重に進めている理由について、ワクチンに特段の安全性の懸念があるからではなく、単にアプローチが新しいからだと説明している。


新型コロナウイルス特集

感染対策

在宅勤務・隔離生活

(英語記事 Human trial of new coronavirus vaccine starts in UK