2020年06月25日 13:09 公開

欧州連合(EU)加盟国が7月1日からの域外との移動解禁に向けて協議を続ける中、アメリカからの渡航者が対象から除外される可能性が出てきた。

新型コロナウイルスの流行に伴い、EUは3月以降、域外からの入域を制限している。これを解除するために、非加盟国が満たすべき条件について合意しなければならない。

現在、観光客の受け入れに前向きな国もあれば、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念する声も出ている。

こうした中、アメリカでは感染者が増加しているため、条件を満たせない可能性が高いという。

このほか、ブラジルやロシアなど感染率の高い国も安全国のリストから外れる見通しだ。

一方、EU加盟国は、入国条件の一部となる各国の保健基準の評価方法について、まだ合意していないとみられている。これは、信頼できるデータの評価に問題があるためだという。

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パンデミックの中、EUとアメリカの間の移動はほとんど制限されているが、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、「数週間以内」に解決策が見つかることを「確信している」と語った。

「渡航してくる人たちによってアメリカが危険にさらされるような方法で移動を再開したくはないし、我々も他の地域に問題を起こしたくはない」

その上で、アメリカ政府は「世界的な移動を元通りにする」ための取り組みを行っていると話したが、詳細は述べなかった。

安全国リスト、どのように作成?

欧州疾病予防管理センターの最新の調査によると、COVID-19についてはブラジルやペルー、チリ、パナマ、サウジアラビアなどが高い「感染確認率」を示している。

アメリカやロシアは人口10万人当たりの感染率は低いものの、それでも欧州のほとんどの国よりは高い数値だ。アメリカではこれまでに230万人が感染し、12万人が死亡。現在もいくつかの州で感染者が増加している。

欧州委員会は加盟国の大使に対し、新たな感染者やその傾向、検査や追跡の基準がEU平均と同等か、それ以下の国を安全国のリストに入れるよう助言している。

加盟国は現在、2種類のリストを検討していると報じられている。米政治ニュースサイトのポリティコによると、ひとつは人口10万人当たりの感染報告数が16件以下の国、もうひとつは20件以下の国で、後者の場合はカナダやトルコが入ってくるという。

米紙ニューヨーク・タイムズは、リストは2週間ごとに更新される見通しで、アメリカも後からセーフリストに加わるだろうと伝えた。

別の基準として、EUとの互恵関係も挙げられている。フランスは、EUにも利益がある国にだけ境界を開放するべきだとしている一方、スペインは近隣のモロッコにも国境を開きたいと話している。

欧州委員会は6月初め、7月1日の境界開放では、西バルカンの非加盟国を最優先にすると強調していた。しかし加盟国のクロアチアは24日、感染拡大を理由に、ボスニア、セルビア、コソヴォ、北マケドニアからの入国者には14日間の自主隔離を義務付けると発表している。

外交的には、アメリカとの関係も問題になりそうだ。ドナルド・トランプ米大統領は3月14日、欧州域内の自由移動を認める「シェンゲン協定」の加盟国26カ国からの渡航を一方的に制限し、EUから批判を浴びた経緯がある。

欧州に観光シーズンは訪れるのか

EU加盟国は、今夏の観光シーズンから少しでも収入を得たい国と、公衆衛生の状況に危機感を持つ国とで割れている。

EU当局は6月15日以降、加盟国に対して域内の移動を解禁するよう求めているが、一部の国は再流行を避けるために慎重な措置を取っている。

たとえば、デンマークは欧州でも最初期にロックダウン(都市封鎖)を解除したが、国境開放については他国よりもペースが遅い。

デンマークはシェンゲン協定に加盟しているが、渡航者にはなお厳しい条件をつけている。6月中旬からノルウェーとアイスランド、ドイツからの渡航を解禁した一方、隣国スウェーデンからの渡航は認めていない。

一方ギリシャは、観光シーズンに弾みをつけるため、6月15日から欧州のほとんどの国に対して国境を開放している。ただし、スペインやスウェーデン、オランダからの渡航者には、新型ウイルスの検査を義務付けている。


<解説>EU加盟国にとって危険な決断 ――カティヤ・アドラー欧州編集長

どの国の渡航者はEUに入れて、どの国はだめなのか?

この課題は当初、EUにとって現実的な決定にみえた。もしある国の感染率がEUおよびシェンゲン協定の域内より高いなら、その国民は入域させることはできない、というものだ。

もし感染率がEU平均と同じかそれ以下であれば、「ヴィルコメン、ようこそ、ウェルカム」ということになる。

しかし実際は、そんなに簡単なことではない。

EUへの旅行を「認められる」国のリストを作るということは、同時に政治的、かつ経済的な決定でもある。

観光客はもちろん、COVID-19に破壊された経済に必要な収入をもたらすだろう。しかし、EU首脳は積極的にリスクを負おうとはしていない。経済に弾みが欲しい国々でさえ、もし観光客が新型ウイルスを持ち込んだ場合、政治的な反発が大きなものになることには気付いている。

なので、もはやいつも通りではあるが、EU加盟27カ国の意見は割れている。

特定の国をCOVID-19を理由に渡航禁止にすれば、友好国との政治的摩擦や、すでにある緊張関係の悪化につながるのではないかという懸念の声もある。たとえば、EUとアメリカ、ロシアの関係はすでに繊細なものになっている。

それから、互恵関係の問題が出ている。

フランスは特にこれにこだわっている。言い換えるなら、ある非加盟国がEUおよびシェンゲン地域からの渡航を制限したら、その国も同じ「待遇」を受けなくてはならないと考えている。同じように、非加盟国がEUからの渡航を認めたら、EUも外交的に同じものを返す必要があるのだろうか?

7月1日からEUおよびシェンゲン地域への入域が認められる非加盟国の範囲は、「小さく」始まると聞いている。

加盟国大使らの協議は26日に再開の見込みで、全会一致の結論はこの日か「そのすぐ後」に決まるという。


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(英語記事 EU considers barring Americans from travel list