2020年06月30日 12:22 公開

米連邦最高裁判所は29日、人工妊娠中絶を規制する南部ルイジアナ州法は女性に不当な負担を強いるものだとして、違憲とする判断を下した。

ルイジアナ州法では中絶手術を行う医師に対し、施設から48キロ圏内にあるほかの病院と、手術で問題が生じた場合に患者を受け入れてもらう入院特権を保持することを義務付けている。

しかし、この法が州内で中絶手術を提供する施設の数を制限し、女性の中絶を受ける権利を侵害しているとの批判が上がっていた。

判決は賛成5、反対4で、保守派のジョン・ロバーツ最高裁長官が4人のリベラル派判事を支持。最高裁は2016年に同趣旨のテキサス州法を違憲としたのと同様の判断を下した。

ドナルド・トランプ大統領在任中に最高裁が人工妊娠中絶に関する主要な判決を下したのは今回が初めて。

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ルイジアナ州はこの法について、女性の健康を守るためだと主張。一方で選択権支持派は、女性が中絶手術で合併症を引き起こすのはまれだとしていた。

選択権支持派はまた、この地域の多くの病院は宗教と結びつきがあるか保守的であることから、院内での中絶手術を認めておらず、中絶手術を行える医師の数が著しく制限されていると指摘。

その結果、中絶を求める女性の憲法上の権利が不当に制限されていると主張した。

地方裁判所は同法が違憲であると認めたが、第5巡回区控訴裁判所はこの法のために「閉鎖を余儀なくされる可能性の高い」クリニックはないと判断し、法の存続を認めた。

原告側は、この判断が過去の判例に違反しているかどうか、最高裁の判断を仰いだ。

最高裁の判断は

スティーブン・ブライヤー判事はルイジアナ州の規制を認めた第5巡回区控訴裁判所を支持しなかった。

ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事、ソニア・ソトマイヨール判事、エレナ・ケイガン判事もブライヤー氏に同意した。

ロバーツ長官も同意したが、別の意見書を提出し、「ほぼ同様のテキサス州法を無効とした4年前の」最高裁の判断が、今回の判決を下した理由だと述べた。

保守派のロバーツ氏はテキサス州の判例では反対意見を述べていたが、今回問われていたのは、過去の判例が正しいか間違っていたかではなく「その判例を順守するかどうか」だったと述べた。

ほかの保守派のクラレンス・トマス判事、サミュエル・アリート判事、ニール・ゴーサッチ判事、ブレット・キャバノー判事は反対した。

トマス判事は「今日、最高裁の多数派は完全に合法な州法を権限なしに禁止し、中絶をめぐる正当な根拠のない判決を永続させている」とした。

トマス判事はまた、女性ではなく中絶を提供する側が訴えを起こしたことに異議を唱え、裁判所の歴史のほとんどでは、「出廷していない個人の憲法上の権利を守るために民間団体は訴訟を起こせないという立場が維持されてきた」とした。

「最高裁の中絶をめぐる過去の判例は悲惨なほど間違っており、覆されるべきだ」

一方で中絶権擁護派は、多くの患者は経済的および法的資源にアクセスできないため、中絶法に異議を唱えるために自ら名乗り出ることを女性たちに義務付ければ、申し立てをする人の数が減ることになると主張している。

判決への反応は

ルイジアナ州法に異議を唱えた団体「Center for Reproductive Rights」代表のナンシー・ノーサップ氏は、最高裁の判断にほっとしたが、「私たちは明日のことを心配している」と述べた。

「この判決の結果、ルイジアナ州のクリニックは州内の100万人の生殖可能年齢の女性に対するサービスを提供し続けることが可能となる」

「しかし残念なことに、今日の裁判所の判決では、必死になって中絶を禁止しようとしている人々を止めることはできない。私たちは明日裁判所へ戻って、私たちの中絶のための憲法上の権利を守るために、州ごとに、法律ごとに闘い続けていく」

ホワイトハウスは今回の判決について、「母体の健康と胎児の命を過小評価した」として非難した。

中絶反対派の南東部バプテスト神学校教授、カレン・スワロー・プライヤー教授はBBCに対し、判決は意外ではなかったと述べた。

「入院特権は時代遅れの医療のなごりだ。真の問題は、(連邦最高裁が人工中絶を女性の権利として認めた1973年の)ロー対ウェイド判決で中心となっていた問題と同じだ。胎児の状態が問題だ」

プライヤー教授は、中絶反対運動は最高裁ではなく、人々の意識を変えることに焦点を当てるべきだと述べた。

(英語記事 US top court strikes down law limiting abortions