2020年07月02日 11:45 公開

香港警察は1日、前日に施行された「香港国家安全維持法」(国安法)に違反したとして男女10人を逮捕した。

逮捕者の中には、香港の独立をうたう旗を掲げた男1人も含まれる。このほかに、禁止されていた集会に参加した約360人が拘束された。

香港返還の記念日である1日は毎年、香港で民主派のデモ行進などが行われる。23年目の今年は、当局が初めてこれを禁止した。新型コロナウイルスの流行を受け、50人以上の集会が禁じられているためとした。

しかしこの日、当局による禁止を無視して数千人が集った。

抗議行動で何があったのか

銅鑼湾では抗議者たちが「最後まで抵抗せよ」、「香港独立」などと声を上げた。

警察は、反逆や扇動に当たるスローガンを叫んだりプラカードで掲げたりした場合は国安法違反となり、逮捕・訴追されるという警告の旗を立てた。


社会民主連線メンバーで民主派活動家の曾健成氏は、抗議に先立ち、「我々が逮捕される可能性は非常に高い」と警告していた。「罪は軽くないだろう。あなた方自身で判断してください」。

セスと名乗る35歳の男性は、ロイター通信に対し、「刑務所に行くのは怖いが、正義のために出て行かなくてはならない。立ち上がらなくては」と述べた。

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警官7人が負傷

警察は抗議者たちに向けて放水銃や催涙ガス、ペッパースプレーを使った。警察によると、この衝突で警官7人が負傷。うち1人は「鋭利な物を持った」暴徒に腕を刺された。容疑者は逃走し、居合わせた人々は容疑者の確保に協力しなかったという。

国安法違反容疑で逮捕された10人のうち、1人は「香港の独立」をうたう旗を掲げていた。しかし一部のツイッターユーザーは、旗が写った写真では、スローガンの手前に小さく「させない(no to)」と書かれているように見えると指摘した。旗を掲げた男の身元は明らかにされていない。起訴されるかは不明だ。

https://twitter.com/hkpoliceforce/status/1278201222457987073


新法は「香港の自由を損なう」

国安法は6月30日に、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で全会一致で可決された。香港での反逆や扇動、破壊行為、外国勢力との結託などを禁止するもので、違反者には最高で無期懲役が科される。

活動家たちは、同法は香港の自由を損なうものだと主張しているが、中国側はこうした批判を一蹴している。

香港は1997年にイギリスから中国に返還されたが、その際に香港の憲法ともいえる「香港特別行政区基本法」と「一国二制度」という独自のシステムが取り入れられた。返還から50年は、中国のその他の地域では認められていない集会の自由や表現の自由、独立した司法、一部の民主的権利などが保護されるというもの。

イギリスは現在、最大300万人の香港人について、イギリスでの定住と、最終的に英市民権を申請する機会を与える方針だとしている。

各国から非難の声

新法をめぐっては多数の国や人権活動家らから非難の声が上がっている。

イギリスのドミニク・ラーブ外相は、同法は言論の自由と抗議の自由に対する「紛れもない攻撃」だと述べた。

イギリスはまた、香港への渡航情報を更新し、「非永住者は拘束や強制送還のリスクが高まっている」とした。

アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、中国は香港の人々との約束を破ったと述べた。

しかし中国外務省の趙立堅報道官は、この状況を客観的に見るよう各国に求め、中国は他国による内政干渉は認めないと述べた。

「自由や法の支配がなくなった」

国安法の施行直後から、複数の民主化推進団体は処罰を恐れて解散を始めた。

民主派議員の許智峯(テッド・ホイ)氏はBBCに対し、「我々の権利が奪われ、我々の自由はなくなり、我々の法の支配や、司法の独立性もなくなった」と述べた。

欧州連合(EU)は香港の独立性が「深刻に損なわれる」可能性があるとの「重大な懸念」を表明した。

米メディアによると、アメリカでは与野党が協力し、処罰される危険のある香港市民を難民として受け入れる法案を策定しているという。

台湾政府は、政治的なリスクに直面している人たちのための特別室を設けると発表している。

香港国家安全維持法について分かっていること

国安法は香港の永住者と非永住者の両方に適用される。以下の内容が含まれている。

  • 国家からの離脱、転覆行為、テロリズム、香港に介入する外国勢力との結託といった犯罪を犯した場合、最低3年、最高で無期懲役が科される
  • 中国中央政府と香港の地方政府への憎悪を扇動する行為は第29条違反となる
  • 公共交通機関の施設を損傷する行為はテロリズムとみなされる可能性がある。長期にわたるデモでは、抗議者たちは市内のインフラを標的にすることが多かった
  • 有罪となった者は公職に立候補できない
  • 中国中央政府は香港に新たな保安施設を設立し、独自の法執行官を配置する。施設も法執行官も香港の地元当局の管轄外となる
  • 香港特別行政区行政長官は国家安全保障事件における裁判官を任命できる。香港の法務長官が陪審員の有無を決定できる
  • 地方自治体が設置した国家安全保障委員会の決定に対し、法的な異議申し立てはできない
  • 中国が「非常に深刻」とみなした事件の起訴を引き継ぎ、一部の裁判は非公開で行う
  • 外国の非政府組織や通信社の管理を強化する
  • 同法第38条に基づき、非居住者が海外から同法に違反したとみなされる可能性もある。つまり、外国人が同法を違反したと見なされた場合、香港に足を踏み入れた時に逮捕される可能性がある

国安法の解釈についても、香港の司法機関や政策機関ではなく中国中央政府が権限を持つこととなる。同法が香港の法律と矛盾する場合には、中国側の法律が優先される。

中国・国務院香港マカオ事務弁公室の張曉明副主任は、6月30日の施行以前の行為については適用されないと説明している。

一方で、香港でこの法に違反して逮捕された場合、裁判は本土で行われる可能性があると話した。

親中派の香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、国安法は「安定を取り戻す」ものだとし、「返還後の中国中央政府と香港の関係において最も重要な発展と考えられる」と述べた。

(英語記事 First arrests under Hong Kong 'anti-protest' law