清義明(フリージャーナリスト)

 イングランド・プレミアリーグで屈指の人気チームであるリバプールFCが6月25日にリーグ優勝を果たした。実に30年ぶりの制覇である。サポーターからすれば、長年待ち望んだ歴史的な優勝である。

 その優勝を勝ち取ったスタジアムに、観客の姿はなかった。もちろん、新型コロナウイルスの感染予防のためである。優勝から長年遠ざかったゆえに、世代を超えて待ち望んだ栄冠の瞬間をサポーターたちは自宅で家族と喜びを分かち合ったことだろう。ただ、もちろんそれだけで済むはずもなかった。

 優勝後、サポーターは試合後に続々とスタジアムに集まり、喜びを爆発させた。そこではソーシャルディスタンスは皆無だ。飲んで騒いで旗を振り、ご法度である大声でのサポーターソングも歌われた。さらには、発煙筒や花火さえも飛び交っていたようだ。

 7月を迎え、全世界でプロサッカーが再開しつつある。欧州では、ほとんどのリーグが6月には再開されている。もっともベラルーシのように、欧州にも新型コロナが世界中で拡大する中でリーグを継続していた国はあった。これは例外としても、一時期は新型コロナの最大の被害を受けていた欧州ゆえ、各国でのリーグ再開は非常に早く感じる。

 もちろん、ただでさえ莫大(ばくだい)な報酬で選手をかき集めているのだ。ビッグビジネスゆえ、経営上の意向もあったはずだ。だがそれよりも、サポーターの世論があったからこそ、これほど早く再開ができたのであろう。

 「サッカーは生死に関わる問題ではない。それよりも重要なものだ」。この言葉は1960~70年代にリバプールを率いて数々のタイトルを獲得し、黄金時代を築いた名将、ビル・シャンクリーの言葉だ。

 リバプールの本拠地であるアンフィールドの前には、シャンクリーの銅像がある。新型コロナウイルスの感染の危険を顧みずに集まって歌い踊るサポーターの姿を、シャンクリーは草葉の陰でどんな思いで眺めていただろうか。
 日本でも、いよいよ本日7月4日からJ1が再開される。熱狂度では欧州に及ばないが、それでもサッカーは国内屈指の人気スポーツだ。一足早くJ2、J3が行われたとはいえ、全国各地のJリーグサポーターたちは首を長くして、週末の試合を待ちかねていたことだろう。ただし新型コロナウイルス対策により、やはり最初は無観客試合で行われる。

 ネーミングセンスでは定評があるJリーグは無観客試合を「リモートマッチ」、略称を「リモマ」と名付けた。観客を入れた試合は7月10日から行われるが、密集した状況を避けるため人数は5千人以下、もしくは会場収容数50%以内という条件付きでのチケットの販売となる。なお7月中は、ビジター席は販売されないことになっている。
レプリカのトロフィーを前に大喜びのリバプールサポーター=2020年6月、リバプール(AP=共同)
レプリカのトロフィーを前に大喜びのリバプールサポーター=2020年6月、リバプール(AP=共同)
 「チケットはしばらく争奪戦になるでしょうね」と古参のJリーグサポーターは言う。「試合に入れたとしても応援はできないし、アウェーの試合はチケットはあってもホーム側だけです。まだいつもの通りとは言えないですね」と嘆く。

 彼はいわゆる「コア」サポーターの一人だ。普段は太鼓で応援をリードし、メガホンや脚立、横断幕や大旗を持ち込んだりとフル装備で試合に挑むのだが、今回は手ぶらでスタジアムに行くことになりそうだ。「ラクといえばラクなんですけども」と、複雑な表情を浮かべていた。