2020年07月06日 14:44 公開

イギリス政府は5日、新型コロナウイルスの影響で再開のめどが立たないまま休業の続く劇場やコンサートホール、美術館など文化施設を救済するため、約15億7000ポンド(約2100億円)の包括的支援策を発表した。

3月23日からの全国的ロックダウン(都市封鎖)が段階的に緩和され、スポーツやパブ、映画館などが徐々に再開するなか、イギリス各地で劇場やコンサートホールなどはその見通しがなく、劇場スタッフの解雇や地方劇場の破綻が相次いでいた。ロンドンの主要施設も経営が危ぶまれるなか、芸術分野の関係者たちは政府支援を求めて強力に働きかけていた。

イギリス政府の緊急補助金やつなぎ融資は、ミニシアターや歴史遺産、ライブハウスなども対象になる。

政府は、「イギリス文化への一度の支援としては最大規模」のもので、劇場などの施設が再開できず苦境に立たされる状況で「存続できるようにするためのもの」だとしている。

政府は近く、表現芸術の段階的な再開についてガイドラインを発表する方針。

3日には早期の演劇再開と支援を求める運動として、イギリス各地の劇場で「生の演劇がなくて寂しい」と書かれたテープが建物に巻かれた。

政府支援の対象は

イングランドの文化施設に対する支援額は計11億5000万ポンドで、8億8000万ポンドの補助金と2億7000万ポンドの融資からなる。政府は融資返済の条件も「緩やかなものになる」と説明している。

同様に、北アイルランドの文化施設には3300万ポンド、スコットランドには9700万ポンド、ウェールズには5900万ポンドがそれぞれ、中央政府予算から提供される。

このほか、イングランドの国民的文化施設やイングリッシュ・ヘリテージ・トラストが管理する文化遺産にも、1億ポンドが振り分けられる。

さらに、新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)によって中断された、文化的インフラや文化遺産の建設事業の再開に、1億2000万ポンドが提供される。

政府は、支援対象の選定は各分野の専門家と協議しながら決定すると説明した。

「この国の魂」

ボリス・ジョンソン英首相は文化施設の救済策について、「イギリス各地で芸術を作り出す団体や施設が、扉を閉ざし、幕を下している間も、運営を続けてスタッフを維持できるよう、この業界を将来世代のために守るための資金だ」と説明した。

オリヴァー・ダウデン文化相は、芸術と文化は「この国の魂」で「この国を偉大にするものだ」と述べた。「世界有数で急成長を続けるクリエイティブ産業の中核」と呼び、「芸術分野が深刻な状況に直面しているのは理解している。将来世代のため、芸術分野を保護し、できるだけ守らなくてはならない」と強調した。

一方、英下院文化特別委員会のジュリアン・ナイト議員(保守党)は、一度きりの支援では済まない問題だと指摘した。

「この国の主要な文化施設が経営破綻しないようにするために、これは第一歩に過ぎない。今回の補助金はありがたいし、一部の施設はたとえ一時的にでも危機から脱出できる。しかし、各施設の長期的な未来を確保するには、大規模な税控除策など、業界全体に特化した何らかの対策が必要になる」

「イギリスのほとんどの劇場やイベント会場で、1メートルの社会的距離維持というのは経済的に見合わない。それは分かっている。いずれは、こうした組織が、世間の信頼を獲得しながら安全に再開する方法が必要だ。ガイダンスの詳しい内容の公表を待っている」

最大野党・労働党のジョー・スティーヴンズ影の文化相は、支援策は「是非とも必要」なもので、政府の発表を歓迎するものの、多くの施設にとっては「少なすぎるし遅すぎた」と述べた。その上で、「いま破綻の瀬戸際でぐらついている」組織を早急に支援するよう呼びかけた。

業界関係者の反応は

アーツ・カウンシル(芸術文化評議会)イングランド、ロイヤル・オペラ・ハウス、音楽会場基金、ロンドン劇場協会(SOLT)、UKシアターなどの関連団体はいずれも、政府の支援策を歓迎した。

アーツ・カウンシル会長のサー・ニコラス・セロタはBBCニュースに、「これからは各地の芸術団体団体や評議会が、この資金を最大限に有効活用して、国内各地で芸術を復活させる番だ。この発表によって私たちは、回復を助けるための道具を手にすることができる」と放した。

音楽会場基金のマーク・デイヴィド代表は、「世界有数のイギリスの音楽シーンに対するこの前例のない介入を、温かく歓迎する」と延べ、「各地のライブハウスや演奏会場の活気あるネットワークをこれで安定させ、守ることができる。またライブ演奏をどうやって安全に再開できるか、計画をまとめるための時間の猶予がこれで与えられた」と評価した。

ロンドン劇場協会(SOLT)と姉妹団体UKシアターのジュリアン・バード代表も、政府補助金を「大いに歓迎する」と述べ、「この資金がどのように分配され投資されるのか、はっきりした情報を各劇場やプロデューサーや、演劇界で働く膨大な数の人たちが期待している。アーティストも組織も共に、できるだけ早く仕事が再開できるように」と話した。

ナショナル・シアターのルーファス・ノリスとリーサ・バーガー共同代表は、支援策を「大歓迎」すると延べ、「イギリスの演劇界を真に世界有数のものにしている、組織やフリーランスの人たちの貴重な才能やインフラに、この大規模な投資が届き、維持してくれるものと思う」と評価した。

英芸能界で働く人たちを支援する労働組合「BECTU」のフィリッパ・チャイルズ代表は、「ついにようやく政府は、私たちやクリエイティブ業界全体の警告を聞き入れてくれた。支援がなければ、世界有数のクリエイティブ業界の大部分を失ってしまうところだ」と述べ、「自分たちの業界の本当の必要性に応えられるよう、支援策の詳細を点検する」方針だと述べた。

(英語記事 Coronavirus: Arts venues welcome £1.57bn government support