山岡鉄秀(情報戦略アナリスト)

 6月24日、韓国産業通商資源省の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長が、世界貿易機関(WTO)の次期事務局長選への立候補を表明した。8月末の退任を表明したブラジル出身のロベルト・アゼベド事務局長の後任として、WTO初の女性事務局長を目指すという。

 韓国といえば、日本の輸出管理厳格化を「WTOなどの国際規範に合致しない不当」と非難し、WTOでの紛争解決手続きを再開したばかりである。

 兪氏自身、日本による輸出管理の厳格化に対応し、先頭に立って日本を批判してきた当事者だ。産経新聞によれば、兪氏は記者会見で「WTO事務局長は特定の訴訟で特定国家を代弁するものではない」と述べ、時事通信の報道でも、日本政府内では仮に彼女が当選しても、「立場上、日本に対して恣意(しい)的なことはできないだろう」との声も聞かれるという。

 だが、本当にそう考えているのであれば、あまりにもナイーブで、国際感覚ゼロだと断じざるを得ない。

 国連は日本人が妄想する「理想郷」とは程遠く、恣意的な操作が跋扈(ばっこ)する世界だ。しかも、今に始まったことではない。

 最近でも、新型コロナウイルスへの対応をめぐる世界保健機関(WHO)の恥も外聞もない親中姿勢や米国の脱退表明を目の当たりにしたばかりではないか。むしろ、韓国は中国のやり方に学ぼうとしていると考えた方が現実的だ。

 ハフィントンポスト韓国版によれば、兪氏は出馬表明の際に次のように発言したという。

 新しい貿易交渉妥結に失敗し、紛争解決機能の実効性を失うなど、危機にあるWTOの公益秩序と国際協力体制を復元し強化することが、私たちの経済と国益の向上に重要だ。


 想像通り、自国の国益に資する目的であることを隠しもしない。そして、自分たちの非を棚に上げて、「紛争解決機能の実効性を失っている」と決めつけている。彼女にとって「実効性ある紛争解決機能」とは、韓国に有利な結果を導き出す「機能」に決まっている。

 実際、国連機関は、自分たちの利益のために支配して利用しようとする国の「汚染」を受けている。自民党の有村治子元女性活躍担当相が6月2日に参院財政金融委員会に提出した資料によれば、15ある国連専門機関のうち、WHO以外の4機関のトップが既に中国に占められているという。
2020年6月24日、WTO次期事務局長選の立候補を表明した韓国産業通商資源省の兪明希・通商交渉本部長=韓国・世宗(聯合=共同)
2020年6月24日、WTO次期事務局長選の立候補を表明した韓国産業通商資源省の兪明希・通商交渉本部長=韓国・世宗(聯合=共同)
 それは、国連食糧農業機関(FAO)、国際民間航空機関(ICAO)、国際電気通信連合(ITU)、国連工業開発機関(UNIDO)だ。中でも、ITUは次の機能を有する極めて重要な機関である。

・有線・無線の電気通信の利用に係る国際的秩序の形成に貢献する
・無線周波数スペクトルや衛星軌道の管理に責任を持つ
・サイバーセキュリティなどについて、専門的な技術援助を行う
・第5世代通信規格(5G)の技能性能、仕様を策定する