既知の通り、中国は華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)を使って5Gネットワークの世界制覇を狙っており、米国は必死にそれを阻止しようとしている。中国による5Gネットワークの支配が実現すれば、世界は中国に生殺与奪の権を与えてしまうことになる。その攻防の最中、中国はいつの間にか5G規格を策定する国連機関を抑えていたのである。

 さらに、国連は決して「基本的人権の尊重」といった普遍的価値観が通用する場ではない。ジャーナリストのデイブ・ローラー氏によれば、香港の自由を封殺する香港国家安全維持法(国安法)の制定について、中国外交部が「勝利宣言」を出したという。

 その理由は、6月30日、国連人権理事会で発表された中国政府に国安法の再検討を求める共同声明にある。この共同声明に加わり、中国を批判した国が日本を含めて27カ国に留まったのに対し、同じ会合で実に53カ国が中国を支持し、同法を称賛する共同声明を出したからだというのだ。支持、不支持を表明した国のリストは次の通りだ(米国は2018年に同理事会を離脱)。

不支持(香港国安法反対)
オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ベリーズ、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、アイスランド、アイルランド、ドイツ、日本、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マーシャル諸島、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パラオ、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、スイス、英国


支持(香港国安法賛成)
中国、アンティグア・バーブーダ、バーレーン、ベラルーシ、ブルンジ、カンボジア、カメルーン、中央アフリカ、コモロ、コンゴ共和国、キューバ、ジブチ、ドミニカ、エジプト、赤道ギニア、エリトリア、ガボン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、イラン、イラク、クウェート、ラオス、レバノン、レソト、モーリタニア、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ニカラグア、ニジェール、北朝鮮、オマーン、パキスタン、パレスチナ、パプアニューギニア、サウジアラビア、シエラレオネ、ソマリア、南スーダン、スリランカ、スーダン、スリナム、シリア、タジキスタン、トーゴ、アラブ首長国連邦、ベネズエラ、イエメン、ザンビア、ジンバブエ
(Axios.com The 53 countries supporting China's crackdown on Hong Kong)


 これを見れば、民主主義を国是とせず、中国が推し進める「一帯一路」路線、言い換えれば、「債務の罠」に絡めとられている国々の中国支持が一目瞭然である。私はかねがね、これからの世界は自由と民主主義を国是とする国々と、中国に付き従う国々に二分されていくので、日本は腹を決めて自由民主主義陣営に加わらなければならないと主張してきたが、まさにこのリストにも表れたのである。

 残念ながら、後者の方が圧倒的多数派になっているが、これは嫌気が差した米国が脱退していることが大きい。中国は懸命に米国不在の間隙を突こうとするし、途上国は米国に叱られる恐れがないため、安易に中国に付き従ってしまうのだ。

 しかし、基本的に1国1票制度の国連では、あろうことか、自由と民主主義を共有し、香港を支援する勢力が圧倒的劣勢に立たされてしまうのである。これが国連の現実だ。
国安法の施行翌日、デモ参加者を拘束し、催涙銃を構える警官=2020年7月、香港(ロイター=共同)
国安法の施行翌日、デモ参加者を拘束し、催涙銃を構える警官=2020年7月、香港(ロイター=共同)
 日本は、このような現状認識に立った上で、国連への戦略的対応をとらなければならない。国連に残ることは、すなわち、他国の謀略と戦い続けることを意味する。国連の普遍的正義を信じて、ひたすら大金を奉納するような態度ではたちまち踏みにじられてしまう。

 今回の新型コロナ感染拡大に際しても、初期段階に「まだWHOが非常事態宣言を出していない」などと真面目な顔で言っている専門家がいた。まさにナイーブに過ぎる見解というものだ。