片岡亮(ジャーナリスト)

 5月31日、歌手で女優の小泉今日子が共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版で大々的に掲載され、女優の渡辺えりとオンラインで対談して注目を集めている。渡辺は「赤旗」で共産党支持を表明し、インタビューなどにもたびたび登場している。小泉も近年、政治的な発言を続けており、しかもリベラルのスタンスを鮮明にしたこともあって物議を醸している。

 小泉は、自身が代表取締役を務める制作会社「明後日」の公式ツイッターでも、東京都知事選への投票を呼びかけたり、小池百合子知事の再選という結果を受けて「現実は受け止めないといけないが、投票率の低さに驚いた」と感想をつぶやいていた。

 中でも注目が集まったのが、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案に対して、反対のツイートを連発したことだ。改正案を含む国家公務員法改正案は結局廃案となったが、5月25日には産経新聞記者、朝日新聞元記者との賭けマージャン問題で辞職した東京高検の黒川弘務前検事長の処分について言及していた。多くの人が「おかしい」と感じ、社会的にも反響の大きかった問題だけに、意見を表明すること自体は特筆することでもない。

 ただ、その内容が、安倍晋三首相の写真が掲載された記事とともに「こんなにたくさんの嘘をついたら、本人の精神だって辛いはずだ。政治家だって人間だもの」というものだった。明らかに権力者に対する皮肉で、強い政治的メッセージだといえる。

 小泉だけでなく、日本の俳優や歌手がこうした問題に意見を述べるたびに騒がれ、「芸能人が政治的発言をすることへの賛否」が持ち出される。ただ、その点への議論が深まることはなく、単に発信者の内容に対する極端な賛否だけがもっぱら注目されて終わってしまう。今回の小泉に対するネット上の反応を振り返っても一目瞭然だ。

 「政治利用されている」「共産党に取り込まれた」などと小泉がまるで思考停止した広告塔と勝手に位置づけて批判する声や、「日本から出ていけ」と非国民扱いするものまであった。

女優の小泉今日子=2018年9月
女優の小泉今日子=2018年9月
 一方で反政権の意向を持つ人は、小泉が何者か、その職業に関係なしに「選挙に出てほしい」とか「純粋な思いで発言している」と支持している。このように、発言内容で物議を醸したのではなく、単に有名人が各自の政治信条を述べて、その影響力を含めて賛否を示しているだけなのだ。

 三原じゅん子や今井絵理子、蓮舫のように現職だけとってもタレント出身議員は山ほどいるし、山本太郎は参院議員や政党党首に就き、東京都知事選に出馬した。このような現状で、そもそもタレントの政治的関心自体を議論することさえ無意味な話だ。