中には「タレントが政治に首を突っ込むな」という国民の権利や民主主義すら否定する人もいる。しかし、こんな主張は「ではどんな職業だったら政治の話をしていいのか」という反論で一蹴されるのがオチだ。

 結局、小泉の政治的発言は、彼女のスタンスに対して好き嫌いを明確にさせただけだ。

 そうなると、人気商売の芸能人にとって、国民を分断する論争に積極参加することは、本来得策ではないといえる。多くの芸能プロダクションが所属タレントに政治的発言を控えるようにクギを刺すのは、むやみに嫌われたり、好感度を下げることでCMなどの出演オファーから外されることを恐れるためだ。

 事務所の求めに従う芸能人にしても、「ビジネス上の中立」を見せているにすぎず、選挙になれば与野党のいずれかの候補には投票している。米国では、タレントの政治的発言そのものが賛否を巻き起こすことはなく、戦時に反戦を訴えた女性カントリー歌手が保守層の多いファンから猛批判を浴びたことで謝罪した例があったが、こちらもビジネス上の損得を考えた上で撤回しただけだった。

 小泉の場合は、急に政治色を強めたようにも見える。だが、もともと彼女はアイドル時代、従来の着せ替え人形のような、それまでのアイドルのステレオタイプから脱却し、自己主張を強めたキャラクターでさらなる人気を得た女性である。

 これまで政治的発言が目立たなかったのは、大手事務所に所属していたことが大きい。2018年2月に独立し、自由に発言できる立場になって「たとえ仕事を失ってでも自己主張はやめない」という姿勢を本当にとっているのだから、自己主張キャラはむしろ本物といえるかもしれない。

女優の小泉今日子=1984年7月撮影
女優の小泉今日子=1984年7月撮影
 先ごろ、大手事務所から独立した途端、種苗法改正案に関して言及して物議を醸した柴咲コウも同様である。今後は独立して事務所に縛られずに自由な発言をする芸能人が増え、その言葉に対する好き嫌いの感情を露わにした人たちが支持と批判を繰り返すのだろう。その裏には、19年に芸能事務所を退所したタレントの活動を一定期間禁止するような、事務所が強い立場を利用した契約は許されないと公正取引委員会が判断したことも後押ししている。

 しかし、当たり前だが、日本国民として政治的発言は言論の自由であり、何ら問題のない話である。ただ、芸能人という職業を「プロフェッショナル」という視点から捉えればどうだろうか。

 お笑いコンビ、ウーマンラッシュアワーの村本大輔は政治的関心を強めるあまり、本業の芸にまでその色を持ち出したため、「笑い」という観点では以前より面白くなくなったとの声が多々ある。もちろん何をしようが彼の自由だが、今や人を笑わせる漫才師というより、評論家に転身してしまったかのようだ。