2020年07月09日 11:48 公開

ドナルド・トランプ米大統領のめいが著した暴露本で、トランプ氏はすべての米国民の生活を脅かす「ナルシシスト(自己陶酔者)」と描かれていることがわかった。

トランプ大統領のめいのメアリ・トランプ氏(55)は著書「Too Much and Never Enough: How My Family Created the World's Most Dangerous Man」(多すぎる、いつも足りない:いかに私の家族が世界で最も危険な男を作り出したか)で、大統領をいかさま師で弱い者いじめをする人物だと表現している。

米政府は同書の内容を否定している。内容の一部は米メディアに流出している。

同書は今月14日に出版の予定だが、大統領の家族が差し止めを裁判所に求めている

「ナルシシズムを超越」

臨床心理学の博士号をもつメアリ氏は著書の中で、叔父のトランプ大統領について、「何事にも満足しない」と表現。ナルシシストのすべての特徴を示していると書いている。

そして、「よくあるナルシシズムをはるかに超えている」と説明。「ドナルドは単に弱いだけでなく、自尊心がもろく、常に支えを必要としている。というのも心の底では自分のことを、自分が言うような人間ではまったくないと、承知しているからだ」と書いている。

メアリ氏の著書によると、トランプ大統領は父フレッド・トランプ・シニア氏(故人)が、メアリ氏の父フレッド・トランプ・ジュニア氏(故人)をどう喝するのを見て、影響を受けて育った。フレッド・ジュニア氏はメアリ氏が16歳の時に、アルコール関連の病気で死去した。


フレッド・シニア氏は、家業の不動産業を継がせるつもりだった長男のフレッド・ジュニア氏に、とても厳しく接したという。しかしフレッド・ジュニア氏は、不動産業を徐々に敬遠。そのためフレッド・シニア氏は、次男のドナルド氏(現大統領)を頼りにするしかなかった。

この選択は吉とは出なかったと、メアリ氏は書いているように受け止められる。

「1980年代に物事がうまくいかなくなると、フレッド(シニア)は息子の紛れもない無能さを放っておけなくなった。自分が事業に関わり続けるしかなかった」と、メアリ氏はトランプ大統領と父親の関係について書いている。

父フレッド氏は「自分のモンスターを解き放ってしまったのだ」と。

一方、米政府は、トランプ大統領の父親が厳しく、息子をひどく扱ったという記述を否定。「父親との関係は温かいもので、父親はとても親切だった」とトランプ氏は話しているとコメントした。

「ドナルドを引きずり下ろすしかな

メアリ氏は著書で、米紙ニューヨーク・タイムズに納税申告書を提供した経緯を紹介している。同紙はそれをもとに1万4000語の調査報道記事を掲載。トランプ大統領の「あからさまな詐欺事例を含む1990年代の怪しい税金対策が、彼が両親から受け取った財産を大きく増やした」とした。

著書によると、メアリ氏の自宅に2017年に記者たちが訪ねてきた。しかし、最初は協力をためらった。

1カ月の間、「ドナルドが規範を破壊し、同盟を危険にさらし、弱者を踏みにじった」のを見て、同紙記者に連絡を取る決心をした。


法律事務所から19箱の法的書類をひそかに持ち出し、記者に渡した。記者たちを抱きしめた時のことを、メアリ氏は「何カ月もの間、これほど幸せだったことはなかった」と記している。

「私にとって、シリア難民支援の団体でボランティア活動するだけでは不十分だった」とメアリ氏は書いている。「ドナルドを引きずり下ろさなくてはならなかった」。

大学入学で「不正をした」

メアリ氏は著書で、トランプ大統領が友人に金銭を渡し、大学進学共通試験SATを代わりに受けてもらったと主張している。「彼の成績評価点の平均は学年上位からは程遠く、合格のための努力が無駄になると心配した」からだったという。

著書によると、トランプ大統領は「SATを代理受験してもらうため、試験に強いと評判の頭のいい子」を雇った。そして、「資金不足に困ったことのないドナルドは、相棒にたんまり支払った」。

トランプ大統領はニューヨーク市のフォーダム大学に入学したが、のちにペンシルヴェニア大学のウォートン校(ビジネススクール)に編入した。

米政府は、大統領が大学入学試験で不正をしたことはないとしている。

兄のようになるのは間違い

メアリ氏は著書で、トランプ一家が機能不全にあるとし、原因の大半は家長のフレッド・トランプ・シニア氏だったとしている。ニューヨーク市の不動産業界の大物だったフレッド・シニア氏は、ドナルド・トランプ氏の「幅広い人間感情の全てを培い経験する能力」を損ない、彼を「破壊した」と主張している。

「ドナルドが自分自身の感情に近づかないようにして、自分の感情の多くは許されないものだとドナルドに教え込むことで、フレッドは息子の世界観をゆがめ、この世界で生きるための能力を損ねた」とメアリ氏は記している。

メアリ氏によると、フレッド・シニア氏にとって「やさしさはあり得ないことだった」。フレディと呼ばれたメアリ氏の父親が何らかのミスで謝るたび、フレッド・シニア氏は激怒したという。

フレッド・シニア氏は「彼(フレッド・ジュニア氏)をあざ笑った。フレッドは長男を『殺し屋』にしたかった」。

兄より7歳年下のドナルド・トランプ氏は、「フレッド(シニア)が(長男に)屈辱を与えるのを見て、学ぶ時間がたっぷりあった」。

「彼にとって最も単純な教訓は、フレディのようになるのは間違いだということだった。フレッドは長男に敬意を払わなかったので、ドナルドも(兄を)尊敬しなかった」

女性たちとの問題

メアリ氏は著書で、トランプ大統領から「Art of the Comeback」(返り咲きの技巧)と題した本のゴーストライターをするよう求められたと説明している。

それによると、トランプ氏が「デートするつもりだったのに断られた女性たちの話が、次々と出てきた」。つきあいたいと思ったはずの相手は、「断られた途端、あれほど最悪で醜くてだらしなく太った女はいない」ということに、トランプ氏の中で様変わりしていたという。

著書によると、トランプ大統領はその後、人を介してメアリ氏を解雇し、それまでの仕事の対価はまったく支払わなかった。

また、メアリ氏が29歳の時には、トランプ大統領は彼女の身体について含みのあるコメントをした。彼女がめいであり、当時は彼も2番目の妻マーラ・メイプルズ氏と結婚していたが、関係なかった。

トランプ大統領は現在の妻メラニア氏に、メアリ氏のことを大学中退で、本のゴーストライターとして雇った時には違法薬物を使っていたような人間だと紹介した。メアリ氏が大学を中退したのは事実だが、薬物を使用したことはなかった。トランプ大統領が自らを「救済者」として印象づけるため、話を作り上げたとメアリ氏は考えている。

「作り話は、彼自身の利益のためだった」とメアリ氏は記す。「そして、ドアのベルが鳴るころには、彼はおそらく自分の作り話を信じ込んでいた」。

メアリ・トランプ氏はどんな人?

メアリ氏の父親で、大統領の兄のフレッド・トランプ・ジュニア氏は、1981年に42歳で死去した。

フレッド・ジュニア氏は長年にわたり、アルコール依存症に苦しんでいた。死因となった心臓発作は、飲酒と関連があった。

トランプ大統領はオピオイド系鎮痛剤の乱用対策を推進するなかで、兄の個人的な問題を、たびたび公の場で紹介してきた。

米紙ワシントン・ポストの昨年のインタビューでは、トランプ大統領はフレッド・ジュニア氏について、家業の不動産業に加わるよう圧力をかけたことを悔やんでいると述べた。

メアリ氏は以前から叔父について批判的だったが、大統領になって以降は、世間の注目をもっぱら避け続けてきた。

ワシントン・ポストによると、トランプ大統領が2016年の大統領選挙に勝利した直後、メアリ氏は「人生最悪の夜」とツイートしていた。

「私たちは厳しく審判されるべきだ」と彼女はツイートした。「この国のため嘆いている」と。

(英語記事 Five claims in Trump niece's tell-all book