2020年07月09日 12:53 公開

すべての授業をオンライン化した米大学に通う留学生にはビザを発給しないとした米政府の決定をめぐり、有名大学2校が8日、規制の差し止めなどを求めて提訴した。

ハーヴァード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が、国土安全保障省(DHS)と移民税関捜査局(ICE)を相手に訴えた。

ハーヴァード大学の学生新聞ハーヴァード・クリムゾンによると、ビザ発給停止の決定について、暫定的な差し止め命令と、差し止めによる永続的な救済を求めている。

同大学のローレンス・バカウ学長は、政府のビザ規制の「残酷さを上回るのは、この規制の無謀さだけだ」とした。

トランプ氏は学校再開を迫る

アメリカの多くの大学は、新型コロナウイルスの大流行で授業をオンライン化している。

ハーヴァード大学は6日、秋学期はすべての授業をオンラインにすると発表した。学部生のうち、キャンパスで暮らしているのは4割にとどまっている。

この発表後まもなく、ICEの決定が明らかになった。留学生は対面授業のある教育機関に通わなければ、強制送還となる可能性があるとしている。ICEはDHSの連邦法執行機関。

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ハーヴァード大学の授業の完全オンライン化については、ドナルド・トランプ大統領が7日、「ばかげている」と批判していた。

「この年代の子どもたちが一緒に過ごすことはとても大事だ、キャンパスで一緒にいるのは。それが我々の目標だ」と述べ、秋の新学期から学校は通常に戻るべきだと強く訴えた。

トランプ氏は8日にはツイッターで、「ドイツ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンと多くの国で、学校は問題なく開いている。民主党は11月の大統領選挙の前に国内の学校が再開するのは、政治的にまずいと考えているが、子どもと家族のためには大事なことだ。再開しないなら助成を打ち切ることもある!」と表明した。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1280853299600789505


一方で野党・民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、ICEの決定を「無意味で残酷、外国人嫌悪」と表現した。

「混乱を招く」

ハーヴァード大学とMITは訴状で、ICEの決定は「ハーヴァードとMIT、それに実質的にすべてのアメリカの高等教育を混乱に陥れる」ものだと主張。

「学生や教職員、地域の健全さへの影響を考慮した形跡もなく進められた」、「何十万という留学生からアメリカでの就学の機会を奪う」としている。

バカウ学長は、「ICEの命令は悪しき公共政策であり、違法と信じている」とした。

9%が完全オンライン授業

ICEは今年春と夏学期のオンライン授業については、留学生はアメリカ国内に残って受けられるとしていた。

しかし6日の発表では、オンライン授業の受講登録をした留学生が、対面授業に変更することなくアメリカ国内に残っている場合は、国外退去の手続きが開始される場合があるとした。

高等教育について情報を提供している「クロニクル・オブ・ハイヤー・エデュケーション」によると、米大学の9%が秋学期にすべての授業のオンライン化を予定している。ただしこの情勢は今後、変わる可能性があるとしている。

ICEは新たな規則について、留学生や職業訓練生に出されるF-1ビザと M-1ビザの保有者に影響が及ぶとしている。

留学生は100万人超

米政府の統計では、昨年は37万3000人超に就学ビザが発給された。米国際教育研究所(IIE)によると、2018~2019年にアメリカの大学や大学院で学んだ留学生は100万人以上に上った。これは、同国の全学生の約5.5%に相当する。

このうち4分の3近くがアジアからの留学生だ。中国人は48%、インド人は26%を占める。

米大学にとって、留学生は重要な収入源となっている。

商務省によると、海外からの学生は2018年、アメリカに計450億ドル(約4兆8000億円)の経済効果をもたらした。

(英語記事 Elite universities sue over US visa ruling