2020年07月11日 12:18 公開

トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領は10日、これまで博物館として開放していたイスタンブールの建築物アヤソフィアを、モスク(イスラム教礼拝所)として機能させると発表した。

アヤソフィアは約1500年前にキリスト教・東方正教会の教会として建設されたが、1453年にオスマン帝国の侵略によりモスクに改修された。

その後、1934年に宗教的に中立な博物館となり、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産に指定されている。

しかしトルコの最高行政裁判所は10日、「アヤソフィアのモスクとしての利用を停止し、博物館だと定義した1934年の閣議決定は法に則っていない」と結論した。

トルコではかねて、イスラム原理主義者がアヤソフィアをモスクに転換するよう求める一方、中立派の野党などが反対していた。モスクへの転換案は、世界各国の首脳や宗教的指導者から批判されてきた。

エルドアン大統領は、トルコは国家主権を使ってアヤソフィアをモスクに戻したと擁護。記者会見では、7月24日に最初の礼拝を行うと発表した。

「全てのモスクと同じように、アヤソフィアはトルコ人にも外国人にも、ムスリムにもそうでない人にも門を開く」

この発表の後、アヤソフィアではイスラム教の祈りが読み上げられ、トルコの主要ニュース局が一斉にこれを放送した。

一方、アヤソフィアが博物館として運営していたソーシャルメディアのアカウントは削除された。


アヤソフィアの歴史

  • ギリシャ語ではハギア・ソフィアと呼ばれるアヤソフィアは537年、東ローマ帝国(ビザンティン帝国)のユスティニアヌス帝が建設した教会が基となっている
  • 巨大なドームのあるアヤソフィアは教会として、さらには建築物として、世界最大級の規模
  • 当時はコンスタンティノープルと呼ばれていたイスタンブールが1204年にカトリック教会の十字軍に占領された時を除き、アヤソフィアは東ローマ帝国が何世紀も所有していた
  • 1453年にオスマン帝国のメフメト2世がコンスタンティノープルを占領。アヤソフィアで盛大なイスラム教の金曜礼拝を行った
  • オスマン帝国はすぐにアヤソフィアをモスクに改修した。4つの尖塔が建設されたほか、内部のキリスト教のモザイク画などがアラビア語の宗教的装飾で覆われた
  • その後、数世紀にわたってアヤソフィアはオスマン帝国の中心だった。トルコ共和国が成立すると、世俗化政策の一環として博物館に指定された
  • 現在のアヤソフィアはトルコで最も有名な観光地で、370万人が訪れる

世界の反応は?

ユネスコはこの決定は「非常に遺憾」だと発表。トルコ当局に「即刻、協議するべきだ」と訴えている。

ユネスコはこれまでも、アヤソフィアについて協議しないままモスク転換を決定しないよう、トルコ政府に求めていた。

東方正教会の指導者や、信者の多いギリシャもトルコのこの決定を非難している。

ギリシャのリナ・メンドニ文化相は、「市民社会へのあからさまな挑発だ」と表明。声明で、「エルドアン大統領による国粋主義によって(中略)トルコは6世紀に戻ってしまった」と批判した。

また、裁判所が博物館の地位を取り消したことについても、トルコには「独立した司法機関がないことを証明している」と指摘した。

東方正教会最大のロシア正教会も、トルコの裁判所が正教会の懸念を考慮に入れてなかったことに遺憾の意を示し、今回の決定がさらなる分裂を招く可能性があると述べた。

アヤソフィアのモスクへの転換は、宗教的保守派のエルドアン大統領支持者には指示されている。

一方、作家のオルハン・パムク氏は、この決定が一部のトルコ人が持っている世俗的なイスラム教国としての「誇り」を奪うものではないかと指摘した。

「私のような世俗的なトルコ人が何百万人も、今回の決定を嘆いている。でも私たちの声は聞いてもらえない」


<解説>オルラ・リン、BBCニュース(イスタンブール)

6世紀に建設され、ビザンティン帝国やオスマン帝国時代を生き延びたアヤソフィアに変化が訪れようとしている。今やまたしても、モスクになるのだ。しかしトルコ当局は、ドームに残る聖母マリアのモザイク画を含めたキリスト教の装飾は撤去しないとしている。

アヤソフィアのあり方を変更するのは、きわめて象徴的なことだ。この建築物を博物館にすべきだと言ったのは、現在のトルコを建国したケマル・アタテュルクだった。エルドアン大統領は今、アタテュルクが進めた世俗化の遺産を取り壊し、トルコを自分のビジョンで作り直そうと一歩を踏み出した。

アヤソフィアのモスク転換に当たり、自らを現代の征服者を呼ぶエルドアン大統領は、まったく悪びれていない。この決定が気に入らない者は、トルコの主権を攻撃しているのだと反発している。実際には、国外でも大勢が反対しているのだが。

アヤソフィアの「奪還」は、大統領支持層の宗教的保守派、そしてトルコの国粋主義者には歓迎されている。新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的打撃から世間の目をそらすため、大統領はこの問題を取り上げたのだと批判する声もある。

しかし国際社会では大勢が、アヤソフィアはトルコではなく人類に属するものだと主張し、そのままにしておくべきだと訴えている。アヤソフィアはキリスト教とイスラム教の架け橋であり、共存のシンボルだと。


(英語記事 Turkey turns iconic Istanbul museum into mosque