田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 7月に入ってから、新型コロナウイルスの感染拡大が東京圏を中心に再び加速している。12日現在、新規患者の報告件数が4日連続で200人を超えた。

 特に新宿、池袋のいわゆる「夜の街」で働く人たちを中心に感染者数が増加している。この感染者数の増加には主に二つの理由がある。

 一つは東京都と新宿区が連携して、夜の繁華街で働く人たちを中心にPCR検査の集団検査を実施していること、もう一つは接客業やホストクラブ、キャバクラでの陽性率が30%を上回る高率であることだ。緊急事態宣言の下での陽性率の最高値が31・7%だったのでそれに匹敵する。

 ただし、新宿区の検査による会社員らの陽性率は3・7%と、東京都の5・9%(7月10日現在)よりも低い。ワイドショーなどマスコミの一部報道では、新宿に市内感染が大幅に拡大しているとするものがあるが、このデータを踏まえれば報道は正しくない。特定の業態で拡大が深刻化しているというのが実情だ。

 筆者がここで特記したいのは、集団検査などで積極的に協力している「夜の街」の人たちへの感謝である。この点を忘れてはならない。

 もちろん、東京都の感染状況は全く安心できるレベルではない。感染経路不明者が占める割合が高くなっていること、都道府県にまたがる感染が拡大していることが挙げられる。さらに、重症患者数は低位だが、感染者数がこのままの増加スピードで推移すれば、対応できる病床確保レベルが逼迫(ひっぱく)する恐れも生じる。

 また、現在目にしている数値は、潜伏期間などを考慮すれば1~2週間前の感染レベルともいえ、現状はさらに感染が拡大している可能性がある。それに報道では、感染者の多くが若い世代であることや、重症者が少ないことが強調されているが、これも正しいとはいえない。

 感染症専門医の忽那賢志氏は「重症者のピークは患者発生数よりも後に来るので、今重症者が少ないからと言って安心はできません。東京都の流行の中心は今も若い世代ですが、すでにその周辺の高齢者や基礎疾患のある方も感染しており、今後の重症者の増加が懸念される状況」だと、警鐘を鳴らしている
東京・新宿の歌舞伎町をマスク姿で歩く人たち=2020年7月10日
東京・新宿の歌舞伎町をマスク姿で歩く人たち=2020年7月10日
 また個人的には、緊急事態宣言解除以後の、日常的な感染予防対策の緩みを実感している。例えば、狭い空間にもかかわらず、筆者以外全員がマスクしない環境で取材を受けたこともある。空調が効いているので息苦しくないはずなのにマスクを着用しておらず、正直非常にリスクを感じた。

 これに類した体験を持つ人も多いだろう。当たり前だが、緊急事態宣言が解除されても、新型コロナ感染の脅威が終了したわけではないのだ。感染予防のマナーが日常的に求められている状況であることを忘れてはならない。