杉山崇(神奈川大人間科学部教授)
麻生マリ子(家族心理ジャーナリスト)
司会・対談構成:梅田勝司(フリーライター、編集者、「PressRoom.jp」記者)

 新型コロナウイルスの感染拡大は、2020年の世界を大戦期のような事態に追い込んだ。現在も決定的なワクチンの開発には至っていないが、各国は独自の対策で新型コロナと向き合い、7月に入ると、経済活動の再開に向けて動き出した国が日本も含めて増えている。

 日本では、事態進行に対策の遅れが指摘されていたが、4月7日に安倍晋三首相が発令を表明した「緊急事態宣言」が、当初予定から約20日後の5月25日まで続き、その間、国民は自粛生活を余儀なくされた。2月25日に出された「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では、企業にできる限りのテレワークを呼びかけ、各種学校などにも休校を要請し、大半が応じることとなった。

 まだ終わりの見えない新型コロナ禍の中で、私たちはこれまで体験したことのない生活を強いられている。感染抑制と経済活動を両立させる「新しい生活様式」の下で新型コロナと共存するには、心を壊さないための知識が求められる。コロナ禍の発生から今までを振り返りながら、心理学者で神奈川大人間科学部教授の杉山崇氏と、家族心理ジャーナリストの麻生マリ子氏に、対談を通して解説してもらう。

* * *

 杉山 私の勤務する大学の状況は、テレワーク半分、出勤半分です。やはり大学を維持しなければならないですから。テレワークといっても、子供が自宅待機になっている中では難しい方が多いですよね。

 学生は8月まで完全オンライン授業です。教職員の出勤について、緊急事態宣言発令の前日までは、中間管理職クラスだと、あくまで要請だから普通に出勤と考えている人が多かったですね。それが一転、発令されたらすぐに大学への入構制限とテレワーク導入を決定しました。それだけ緊急事態宣言は威力があったと思います。

 ちょっと話が広がるんですけど、この対応には「同調圧力」を感じました。同調圧力に抵抗すると、イメージも悪くなってしまう。大学に限らず、自社のブランドイメージを気にする企業や店舗などは緊急事態宣言を重く受け止めて、休業や在宅ワークにせざるを得なかったと思います。
学童保育に子供を迎えに来た保護者ら。新型コロナウイルスによる臨時休校の影響で、一人親世帯の不安が募っている=2020年3月、大津市
学童保育に子供を迎えに来た保護者ら。新型コロナウイルスによる臨時休校の影響で、一人親世帯の不安が募っている=2020年3月、大津市
 梅田 麻生さんもお子さんがいらっしゃいますけど、大変でしたか?

 麻生 現在、学校は再開されていますが、都内はおおむね6月の初めから分散登校が2週間続き、3週目から一斉登校になりました。2月27日夜に一斉休校要請が出て、取材した中ではおおむね翌週の3月2日か3日から休校に入りました。学校再開の時期に地域差はありますが、休校期間は特定警戒都道府県を中心に5月末まで最長3カ月に及んでいます。

 休校中の学童保育(以下、学童)も地域や学校ごとに致し方ない差や方針の違いがありました。学童の多くは自治体から民間企業へ委託される半官半民で運営されています。お子さんが学校へ行っている時間帯や、放課後の小学生を対象に地域体験学習と居場所を兼ねた「放課後子ども教室」事業が行われている学校や地域では、その時間をパート勤務や傷病の療養にあてていた家庭もあり、その緊急受け入れをする学童もありました。それに伴う学童の支援員の緊急増員など自治体も大変だったと聞いています。

 でも、隣の街に行けば、そもそも学童は常に待機児童を抱えている状態で、そのような対応はできないと言われたり、閉所になっていました。また、預かる学童にしても、医療関係者や生活インフラに関する業務に従事されている家庭や一人親家庭、自宅介護をされている家庭などに限定されていたそうです。そうなると、民間学童や、障害のあるお子さんであれば「放課後等デイサービス」に預けるしかありません。しかし、英会話教室や塾、スポーツクラブの運営する民間学童は、月額8万円ほどかかってしまうという話も取材の中でよく伺いました。