杉山 そう言えると思いますが、実際は自腹で休業中の給料を払えない企業の方が日本では多いわけで、実際とあるタクシー会社は一斉に全社員を切りましたね。これは、その間に失業手当をもらってくれ、というアイデアでしたが。

 麻生 Uberもフルタイム勤務の従業員を対象に、世界で3千人以上の解雇を5月中に2度行ってますね。計6700人もの大規模な人員削減です。事業所の閉鎖や統合も行われました。コロナ禍で配車サービス事業が80%減少したことが主な理由です。

 Uber Japanでも日本進出当初から数々の事業立ち上げに参画してきた日本人社員が解雇された事例もあります。一方巣ごもり消費で、Uber Eatsの配達員が担う仕事量は増加していますが、配達員は独立した一業者としての契約なので、社会的には弱者の立場といえるでしょうか。

 梅田 となると、今回の新型コロナ問題では正社員も雇用の危機にさらされている。インターネットでは「おかしいじゃないか」という声が湧き上がっていましたが、時期的な問題もあって大規模デモなどは起きませんでした。米国はお構いなしにデモをやっていますけど。

 杉山 日本人は、あまりデモなどで暴れない国民性なんです。まあ昔からですね。江戸時代にデモでもしたら打首ですからね。切り捨て御免の国でしたから。

 だから、もともとあまりデモの文化がないというんでしょうか。戦後になってから、学生運動の時代の活動家たちがデモをしていましたが、別にみんながデモをしたというわけではなくて、「ノンポリ」と言われる学生運動に無関心な学生たちがけっこういました。今の日本でデモを起こして何かが変わると思ってない人はけっこう多いかもしれないですね。

 というのも、日本人には会社に協力しようとするマインドが働くんです。いわゆる日本人気質というものです。組織に協力的なマインドを持った人しか日本では生き残れなかった。昔は村社会が組織ですから。村社会に協力的な人だけが生き残れる社会だったから、どうしても協力しようとする遺伝的な傾向が働いた。そういうマインドの人が子孫を残してきた結果が現在ですからね。
安田講堂が学生らに封鎖された当時の東大本郷キャンパス=1968年7月
安田講堂が学生らに封鎖された当時の東大本郷キャンパス=1968年7月
 といいつつも、大正の近代化以降は、協力的でなくてほぼ村八分になるような一部の人が社会を変えてきたりしてきたんですけどね。でも、大多数はやっぱり村社会に協力的な人たちですよ。そういう遺伝的傾向を持った人が日本人は多いですね。

 麻生 米国の方からは「この情勢下で、なぜ日本人はおとなしく暮らしているのか」とまで言われました。

 梅田 日本人はあまりお上に逆らわない傾向がたしかにある気がします。SNSで声を上げている人はいて、時々盛り上がることもありますが、日本の根本は変わりませんね。