仲村覚(日本沖縄政策研究フォーラム理事長)

 6月30日、香港国家安全維持法(国安法)がついに施行された。翌日の返還記念日に香港市民の抗議デモが行われ、現地メディアによると逮捕者は約370人に上った。1997年7月に英国から返還された香港に対し、中国は外交・防衛を除く分野で高度の自治を50年間維持すると約束した。

 しかし、この瞬間、香港の「一国二制度」は形骸化してしまったのだ。もはや、香港に希望はない。香港がウイグルやチベットのように弾圧される時代もそう遠くないかもしれない。自由を求めて香港を脱出する人も多くなってくるだろう。

 さて、このような香港のニュースは日本国内でも注目され、偏向報道が指摘される沖縄メディアでも報道されている。人権がじわじわと奪われていく香港の実態を目にすれば、沖縄の人々もさすがに中国の脅威に気がつき、反米運動や反米報道も収まっていくのではないかと期待する人も少なくないだろう。

 実際にはどうなのか、沖縄メディアの香港に関する報道を確認してみよう。7月6日の沖縄タイムスでは、「香港の民主主義が死んだ…国安法おびえる県出身者 『デモできる沖縄がうらやましい』」という記事の中で、香港在住の沖縄出身女性の声を伝えている。

 約30年住むその女性は「意思表示できる自由があることを、当然だと思わないで」と、政治や選挙に目を向けることの大切さを訴えていた。筆者もその通りだと相槌を打ちたくなった。

 だが、記事を読み進めていくと、後半になって香港の問題が想像を超える方向に変わっていった。引き合いに出されたのは、昨年、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移転に伴う名護市辺野古埋め立てを問う県民投票の運動に参加した25歳の写真家の言葉である。

 示された新基地建設反対の民意を無視し、日本政府が工事を強行する沖縄の現状に「民意を国家の力で押さえ付ける香港の状況と似ている。沖縄も安心できない」と危機感を抱く。香港の人々の話を聞き内実を知ることで沖縄の現状打開についても模索し、連帯していきたいと語った。


 このような報道は今回だけの話ではない。香港区議会(地方議会)選挙で民主派が圧勝した直後の昨年11月28日、琉球朝日放送で「香港民主化デモ現地で見えた沖縄との共通点とは」という特集が放映された。
2020年7月1日、香港で返還記念式典会場周辺をデモ行進し、気勢を上げる民主派活動家ら(共同)
2020年7月1日、香港で返還記念式典会場周辺をデモ行進し、気勢を上げる民主派活動家ら(共同)
 取り上げられたのは、香港に実際足を運んだ200万人デモの参加者たちが那覇市内で開いた報告会である。香港警察による発砲など人権を無視した過激な取締りの悲惨さや国家権力の恐ろしさを伝えた上で、報告者は次々にこのようなことも訴えていた。

「個人の権利対国家の権力の戦いというか構造になっている。それは沖縄とも結びつきがあるというか、同じ構造であると僕は考えていて」

「沖縄もそうだけど香港も決まったことだからということで諦めないで、若い人たちが将来の人のために、自分たちの未来のために一生懸命声を上げている。そのことを沖縄の人たちも知ってほしいと思いました」