
2020年07月16日 11:28 公開
覆面アーティストのバンクシーがイギリス・ロンドン地下鉄車内に描いた新作を、ロンドン交通局が消したとき、清掃員たちはバンクシーによる作品だとは知らなかったことがわかった。
「マスクをせよ、さらば与えられん」と名づけられたこの作品は、ロンドン地下鉄のサークル・ライン車内に登場。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)から着想を得たポーズをとったり、マスクを着用したりしているネズミが多数あしらわれた。
「ほかの落書きと同様に」
バンクシーは14日、インスタグラムで新作を披露した。しかし、この時にはすでに、ロンドン交通局(TfL)の清掃員たちによって作品は消されていた。
TfLの情報筋は、バンクシーの作品が「TfLネットワークにおけるほかの落書きと同様に扱われた」と明かした。
「清掃員たちの仕事は、確実にこの地下鉄ネットワークをきれいにすることだ。現在の情勢を考慮すればなおさらだ」
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マスク着用を促す
バンクシーが投稿した動画には、清掃員の格好をした、バンクシーとみられる男性が映っていた。
動画では男性が地下鉄の乗客にその場から立ち去るよう指示し、車両内のあちこちにネズミのステンシルアート(型紙にスプレーを吹き付けて絵柄を作成するアート)を施す様子が確認できる。
この大胆な行動は、新型コロナウイルスが世界中に拡大する中、マスク着用を促すためのものとみられる。
https://www.instagram.com/p/CCn800cFIbe/
TfLは声明で、「厳格な反落書きポリシー」に従い、「数日前に」この絵を消したとしている。
ロンドンでは公共交通機関のすべての利用者はマスクを着用しなければならない。
TfLは「フェイスカバー着用を人々に奨励しようとする気持ち」をありがたく思うとした。
「我々の顧客へのメッセージを新しいかたちで、適切な場所で伝えてもらう機会を、バンクシーに提供したい」
<解説>作品が消されることも計画の一部――トム・エドワーズ、BBCロンドン交通担当記者
バンクシーが地下鉄車内での活動をソーシャルメディアで披露するよりもずっと前に、あの新作はふき取られ、掃除用クロスの染みになっていた。
現在の情勢においては、地下鉄の清掃員が迅速かつ効率的に仕事をこなし、これほど迅速に作品をふき取ってくれたことは、おそらく心強いことだろう。
落書きは(交通業界や多くの通勤客からは確実に)脅迫的で居心地の悪い雰囲気につながるものとみなされている。
もちろん、アートとして保存あるいは保護すべきだとの声もあるだろうが、それはいささか空論に過ぎる。
以前、自分のアートをわざと破壊したことのあるバンクシーは、地下鉄車内で作品を描くことで何が起きるのか、よくわかっていたのだろう。
作品が清掃員によって消されることも、この計画の一部だったのかもしれない。