2020年07月17日 11:46 公開

ケリー・アレン、BBCモニタリング

マイク・ポンペオ米国務長官のツイートについて、実は中国政府に何かを言おうとしたのではないかとの憶測が飛び交っている。

注目を集めているのは、ポンペオ氏の飼い犬マーサーが「彼女のお気に入りのおもちゃ全部」と一緒に写っている写真。中央には「くまのプーさん」のぬいぐるみが置かれている。

くまのプーさんは、中国の習近平国家主席をからかう侮辱的なニックネームとして広く知られる。

ポンペオ氏は中国のネット利用者に人気があるとは言えない。「邪悪」、「大うそつき」などと評されている。

しかし、ポンペオ氏のこのツイートを、中国ネットユーザーは簡単には話題に出来ない。習氏を指すニックネームは、中国で厳しい検閲を受けるからだ。そのことを、ポンペオ氏は承知しているのかもしれない。

なぜ「くまのプーさん」?

中国政府は、共産党幹部らを侮辱するようなコメントやニックネームを精力的に取り締まっている。一方、同国のネット利用者らは長年、政府指導者らを指す創造的な方法を作り出してきた。

2013年には、習氏と「くまのプーさん」を並べた画像が拡散され、外国でも注目を集めた。

愛らしい子ども向けキャラクターに関する害のない投稿を取り締まれば、笑い者にされてしまいがちだ。それだけに、検閲当局はこの手の発信に対して動きにくい。その結果、「くまのプーさん」のニックネームはすぐに広まった。

これと似たような手法は、元国家主席の江沢民氏に対しても使われた。江氏のときは、「カエル」に関係したニックネームを使用して、江氏を話題にすることができた。

「プーさん」には気をつけよう

本当に「プーさん」投稿にそこまで気をつける必要があるのか? ひとことで言えば、イエスだ。

「くまのプーさん」と、それに類似した言葉はもう長いこと、中国のソーシャルメディアで検閲されてきた。

中国版ツイッターの新浪微博(シナウェイボー)で「くまのプーさん」を検索すると、今は中国政府が承認したメディアやアカウントだけが表示される。

検索結果の下の方には、「一部の結果は除かれています」と断り書きが出る。

中国政府は昨年、台湾のゲーム「Devotion」についても、習氏と「くまのプーさん」を関連付ける内容が含まれているとして禁止している。

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ポンペオ氏に悪気はなかった?

ポンペオ氏が何の他意もなく、愛犬とその遊び道具の写真を投稿した可能性は十分ある。だがこの写真には、他にも注目すべき点がある。

ポンペオ氏が「犬」を登場させたのは、アメリカもしくは自分自身を意味したのかもしれない。中国語で「犬」は、攻撃的で野蛮な人や国を指す言葉として使われることが多いからだ。

香港のデモ参加者たちは、警官の暴力を指して「犬」という単語を使ってきた。中国大陸では常に、アメリカとポンペオ氏は共に「犬」と呼ばれている。

アメリカの要請を受けたカナダ当局が、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)を逮捕した際には、カナダはアメリカの「犬の足」だとあだ名された。

今回の写真にはゾウのおもちゃも写っているが、これにも重要な意味が込められているのかもしれない。インドをほのめかしてるとも考えられるのだ。

どんな反応が出ている?

ポンペオ氏のツイートにはコメントが何千件も寄せられている。その多くは習氏をあざける画像などを添付し、ポンペオ氏が「中国をおもちゃにしている」と言及している。

しかし、中国ではツイッターがブロックされ、歴代指導者に言及する表現は検閲されていることを考えると、ネット利用者がポンペオ氏のツイートを話題にするのは難しい。

ポンペオ氏の投稿が、中国のソーシャルメディアに浸透した様子も見当たらない。

中国のネット利用者はこのところ、機会さえあればポンペオ氏を攻撃していた。それだけに、今回の犬の写真にだけ無反応というのは、意外なことかもしれない。

国営メディアは5月以降、ポンペオ氏を「うその王様」、「邪悪」などの強い言葉で批判し続けている。同氏やその仲間が、新型コロナウイルスや香港、新疆ウイグル自治区に関連して出している声明を受けたものだ。

中国メディアはしばしば、ポンペオ氏を信頼できない人物として描いてきた。ポンペオ氏が何か発言するごとに、個人攻撃を繰り広げてきた。

もしかするとポンペオ氏は、中国を攻撃する自分なりの方法を見つけたのかもしれない。これに中国は答えられない。沈黙あるのみだ。

(英語記事 Why a dog photo may be a coded insult at China