2020年07月19日 11:21 公開

ロンドン北部の住宅地イズリントンで警察官が黒人男性の首に膝を押し付けている様子の映像が浮上し、警官2人が職務停止などの処分を受けた。黒人男性の弁護士は、アメリカで起きた事件とそっくりだとして、ロンドン警視庁は謝罪すべきだと話している。

ロンドン警視庁によると、警官たちは16日、イズリントンの通りでけんかが起きているという通報を受けて現場に急行。マーカス・クタン容疑者(48)が公共の場で刃物を所持していたとして、現行犯逮捕した。

この逮捕現場について、警官2人がクタン容疑者を地面に押さえつけて手錠をかける際、警官の1人が容疑者の首に膝を押し付けているように見える動画が、ソーシャルメディアで広まった。

映像では容疑者が警官たちに、「首からどけ」と繰り返す様子が映っている。

ロンドン警視庁のサー・スティーヴ・ハウス副総監は、動画について「非常に気がかり」な内容で、警官訓練で指導している逮捕術ではないとコメント。独立の警察監察機関(IOPC)が捜査を進める間、警官1人が職務停止処分になり、もう1人は現場勤務から外されることになった。

クタン容疑者は18日に治安判事裁判所に出廷し、ナイフ所持について無罪を主張した。

ティム・ラステム弁護士は容疑者が刃物を持っていたのは、自分の自転車を修理するためで、合法的だったと主張した。

弁護士は法廷で、クタン容疑者の逮捕について、アメリカで5月に起きたジョージ・フロイド氏の死亡事件に「ほとんどそっくりだ」と批判し、容疑者への正式な謝罪を要求した。

ラステム弁護士は裁判所の外で記者団に、「要するにクタン氏は、訴追事実と異なる理由のため職務質問され身体検査をされた」と話した。

「首に膝を押し付けるのは、過剰な制圧行為だと考える(中略)アメリカでジョージ・フロイド氏に起きたこととそっくりだ」

「すでに手錠をかけられ警官2人に制圧されている状態で、『息ができない』、『首から膝を外せ』と繰り返している状態だった」

ラステム弁護士は、クタン容疑者が手首や首への「最小限の」けがで済んだのは幸運だったとして、「アメリカで起きたような悲惨な結果にならなかったのは、運が良かった」と述べた。

「首からどけ」

BBCも入手した逮捕現場の映像では、片方の警官が自分の膝を使って容疑者を制圧し、手で容疑者の頭を押さえている様子が見える。

地面に押し付けられ手錠をされた容疑者は、「首からどけ」と繰り返し怒鳴っている。

やがて体を起こせるようになった男性は、座った状態で警官たちと話し続けている。

複数の通行人が警官たちを叱責し、しばらくして複数のパトカーが到着する。

目撃者の1人はBBCに、「(容疑者が)このまま処刑されるんじゃないかと心配だった。ジョージ・フロイドが殺されたのと、そっくり同じだった」と話した。

「集まった人たちが撮影していなければ、警官は彼を窒息させるか、首の骨を折るかもしれなかった。彼はすでに地面に倒れて手錠をかけられていたのに、なぜその上で首に膝を押し付ける必要があるのか」

「指導している逮捕術ではない」

ロンドン警視庁のハウス副総監は、逮捕現場の映像について「使われている逮捕術の中には、非常にきがかりなものもある。警官訓練で指導しているものではない」と述べた。

BBCのダニー・ショー内政担当編集委員は、ハウス副総監のコメントはその内容や厳しさからしてきわめて異例だと指摘。ソーシャルメディアで拡散した通行人動画の一部だけでなく、一般に公表されていない、警官たちの制服に装着されているボディカメラ映像を見たロンドン警視庁は、事態の全体像を把握しているはずで、その上での副総監コメントなだけに、その異例ぶりが際立つと話している。

ロンドンのサディク・カーン市長は、「この気がかりな事件を非常に心配している。ロンドン警視庁幹部に事態の緊急性を指摘した」とコメント。「ロンドン警視庁が速やかに検討したことを歓迎する。IOPCに照会したのは正解だ」と評価した。

ロンドン警視庁によると、監察機関IOPCは独自捜査を開始することになった。

(英語記事 Met Police must apologise for 'knee-on-neck' arrest says lawyer / Officer suspended over 'kneeling on neck' during arrest