梅原淳(鉄道ジャーナリスト)

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出自粛は社会に大きな変化をもたらした。鉄道について言えば、各社から利用者数が前年同月比9割減などという今までに例のない数字が発表されている。通勤ラッシュは嘘であったかのように姿を消し、人であふれかえっていた巨大ターミナルが閑散とする様子は、まさに潮が引くようにという表現がふさわしい。

 外出の自粛が解除された後も、鉄道をめぐる状況は以前ほどのようには戻っていないようだ。人々は引き続き移動を避けるようになったのである。

 感染抑制と経済活動を両立させる「新しい生活様式」が採り入れられてから1カ月ほどが経過した7月7日、JR東日本は2020年6月の鉄道営業収入が対前年比で53・4%、つまり46・6%減少したと発表した。4月の対前年比24・0%、76・0%減、5月の対前年比29・0%、71・0%減という数値は、緊急事態宣言の発令の影響で人々が外出を控えざるを得なかったからやむを得ない。

 しかし、移動の制限が原則として解除されていた6月もこのあり様である。4月から6月までの第1四半期は対前年比34・1%、65・9%減だという。

 今後も鉄道営業収入が上向かないとなると、JR東日本の業績に大きな影響を及ぼす。同社は20年3月期の単体決算で2兆1133億円の営業収益を挙げ、2940億円の営業利益を計上した。

 だが、21年3月期には営業収益の大幅な減少が見込まれ、殊によると赤字に転落するかもしれない。JR東日本は1987年4月1日の設立以来、一度も営業損失を計上したことはないから、同社にとっても鉄道業界にとっても大事件だ。

 JR東日本が今挙げた数値を発表した同じ日、同社の深澤祐二社長が会見を行い、新型コロナウイルス感染症の影響は予想以上に深刻であることを明らかにした。それも「以前のように利用客は戻らない」とまで述べたのである。
JR東日本の深沢祐二社長=2019年1月(荻窪佳撮影)
JR東日本の深澤祐二社長=2019年1月(荻窪佳撮影)
 その上で、深澤社長は「長期的に経営が成り立つ形で、さまざまなコストやダイヤ、運賃の見直しを検討している」との考えを示した。見直し策の一例として、ダイヤ面では利用状況の芳しくない早朝、深夜の一部列車の削減を、運賃面では混雑のピークをずらすような柔軟な運賃をそれぞれ挙げた。

 深澤社長の会見は各方面に反響を呼んだ。特に、朝夕の通勤ラッシュ時には値上げの可能性も出てくる時間帯別運賃の導入を検討している点について、マスメディア各社が一斉に報じた。