それでは、JR東日本における通期定期運賃の採算性を求めてみたい。通勤定期の利用者1人が1キロ乗車したときの鉄道営業収入は7・2円であるから、18・9キロ乗車したときの利用者1人当たりの鉄道営業収入は136・1円となる。

 一方、同社の定期乗車券の利用者と通常の乗車券の利用者を合わせた利用者1人が1キロ乗車したときの営業費用は12・0円と、この段階で既に通勤定期運賃は赤字が確定してしまう。18・9キロ乗車したときの利用者1人当たりの営業費用は226・8円で、つまりJR東日本は通勤定期券を携えた利用者が1回乗車するたびに90・7円の営業損失を計上しているのだ。

 通学定期運賃は通勤定期運賃以上に割引率が大きい。ということは、通勤ラッシュ時は利用者にとってはもちろん、JR東日本の経営上も誠にありがたくない時間帯であるのだ。

 JR東日本の経営が成り立っているのは、2017年度に24億9445万人を数えた普通乗車券など、つまり定期乗車券以外の利用者のおかげだ。同社の利用者は合わせて64億8812万人であるから、定期乗車券以外の利用者は全体の38・4%しか存在しない。にもかかわらず、1兆8366億6678万円の鉄道営業収入のうち、何と72・6%に当たる1兆3336億3881万円をこれらの利用者から得ているのだ。

 定期乗車券以外の利用者の採算性も求めてみよう。利用者1人が1キロ乗車したときの鉄道営業収入は21・9円、そして平均すると24・4キロ乗車しているので、利用者1人当たりの鉄道営業収入は534・4円となる。

 先に記した通り、全ての利用者1人が1キロ乗車したときの営業費用は12・0円であるから、24・4キロでは292・8円となり、利用者が1回乗車するたびに241・6円の営業利益を計上しているのだ。

 通勤定期運賃での営業損失を大きく取り戻しているとはいえるのだが、少々営業利益が多すぎるのかもしれない。というよりも、なぜ通勤定期運賃で生じる営業損失をJR東日本が放置してきたのか理解に苦しむ。
JR新宿駅の南改札(ゲッティイメージズ)
JR新宿駅の南改札(ゲッティイメージズ)
 通勤定期の利用者へのサービスとの声も聞かれるが、弊害も生じている。その一例は中央線の三鷹駅と立川駅との間で見られる。

 長さ13・4キロのこの区間は国鉄時代から複々線化の計画が立てられていた。同じ中央線の御茶ノ水-三鷹間21・5キロのように快速電車用の複線と各駅停車用の複線を敷いて、通勤ラッシュ時の混雑を緩和しようという内容だ。

 国鉄の分割民営化から既に33年が経過したものの、JR東日本は三鷹-立川間の複々線化に着手する気配を見せていない。混雑が緩和されたからという理由が挙げられるが、そうとも言えない状況が2013年度の国の統計からもうかがえる。