麻生 自分のせいではないので、ある意味不可抗力的ですよね。

 杉山 そこで無力感を感じる人はさらに感じてしまうし、今できることは何か考えられる前向きな人は、新しい生き方や新しい仕事、新しい生きがいを見つけられるんでしょうけどね。そこで一番ダメージを受けるのが、受け身のタイプです。よく言われる「命令待ち」の人ですね。自分から何かを仕掛けようとしませんからね。

 麻生 それって、組織との一体感に安心する日本人には非常に多いのではないでしょうか?

 杉山 そうですね。まさに現在のような状況が苦手な人が日本には多いですね。

 梅田 かといって、心療内科やカウンセリングを自分で探して受診するのも少しハードルが高そうですね。

 麻生 心療内科や精神科の受診や、カウンセリングを受ける方が急増したというような話は聞かれていないですね。コロナ禍でメンタルの不調を訴える方は確実に増えてはいるのですが、通院や外出による感染リスクが怖いため、受診したくてもできないという声は非常に多く聞かれました。

 杉山 それと、カウンセリングって安くないんです。金額に幅がありますけれど、一番安くても5千円、高いと1万5千円くらいになります。仕事が減っていたり、職を失ってしまった人にそんな額を出す余裕はないと思えます。

 お金がない人にとって、カウンセリングは行政の支援待ちになってしまいます。業界では、リタイアした臨床心理士が善意でボランティア活動をしたりしています。

 麻生 私もコロナ禍で無料電話相談を受けていますが、カウンセリングでも友人への相談でも、話を聞いてもらうだけでちょっと気持ちが楽になることもありますよね。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 杉山 心の痛みは大脳辺縁系で作られるんですよ。私は「ウマの脳」と呼んでいますけど、この大脳辺縁系は、気分の重さや心の痛みを誰かが共感してくれると活動が緩和します。

 話を聞いてもらって、共感されると、気が楽になる。人間の大脳辺縁系が仲間を求める役割を果たしているからです。仲間がいることは、自分が社会的に安全でもあることなので、自分の社会的安全が確認されれば、心の痛みも軽くなっていくわけです。

 ただ、共感され慣れてる人と、され慣れてない人がいるんですよ。共感され慣れてない人にしつこく共感すると、嫌がられますね。