その場では、事前の打ち合わせで予定されていなかったゲーム条例の話題に急きょ触れることになり、登壇者の意見を聞きました。すると、「世の中には、ゲームに限らず依存というものが全くないとは思わないし、特にゲームに関する問題については業界としてちゃんと向き合わなければならない」という認識で全員一致しましたが、結論としては次のようになりました。

 そもそも壇上に立っている4人全員が、若い頃から毎日1時間どころではないぐらいゲームにのめり込んでいて、現在でもハードにやり込んでいる。だが、社会人として何とかやっていけているということは事実である。また、東京大学にも100人規模のゲームサークルがあるような現状がある。要は行政に規制されるべき話ではなく、若者個々人の向き合い方であり、家庭内での問題なのではないか。


 特に、十束さんは条例素案がまとまったと報じられた1月10日の当日に、次の書き込みをツイッターに投稿して多くの「いいね」やリツイートを獲得しています。

ゲームの利用時間制限なんてされたら思春期の私は心が死んでいたでしょう。
学校に馴染めない時支えてくれたのも、引きこもりから救ってくれたのもゲームで、今このお仕事もゲームが繋いでくれた縁あってのことです。あの頃、時間を忘れて熱中したものの記憶や経験が大きな財産となる場合もあります。


 香川県の条例では「ゲーム依存によるひきこもりと、その他の障害」が問題として挙げられています。しかし、このツイートに象徴されるように、「ゲームが原因で不登校になった場合」と「学校や友達関係やそれ以外の問題により、不登校になった子供の救いとしてゲームがあった場合」の両方のシチュエーションがあります。

 十束さんの場合は、まさに後者に当てはまります。しかも、十束さんのような経験を持つ人は決して少なくありません。
ゲーム依存症対策条例を可決した香川県議会=2020年3月18日
ゲーム依存症対策条例を可決した香川県議会=2020年3月18日
 私がNHKのeスポーツに関する番組にゲストで呼ばれたときのことです。同じくゲストで呼ばれていたグラビアアイドルの倉持由香さんも、やはり「引きこもり状態をゲームに救われた」という体験談を話していました。

 このように、「ゲーム依存」と「不登校」の関係については、分けて考える必要があるのです。にもかかわらず 、この条例がゲームによって救われた子供の存在を重視せず、「ゲームが原因で不登校などの問題を引き起こす」という結論ありきで進められてしまったことが、問題となった要因の一つであると考えています。

 そして、私がゲーム条例の最大の問題点として考えているのは、制定の根拠です。条例の制定に関しては、WHOと依存症を専門とする国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)、そして香川県教育委員会が行った調査に基づいています。