まず、WHOと久里浜医療センターの調査では「ゲームの使用時間が1時間を超えると、成績の低下が顕著になる」としています。

 WHOは2019年5月、オンラインゲームやテレビゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を新たな依存症として認定し、22年1月から適用する予定です。ただ、WHO委員のウラジーミル・ポズニャック氏は「たとえゲームに没頭している人であっても、世界中の多くのゲーマーがゲーム障害に苦しんでいると認定されることはないでしょう」とも語っています。それでも条例には、この見解が議論の俎上(そじょう)に乗ることは一切ありませんでした。

 しかも、WHOの発表には、実は久里浜医療センターの樋口進院長も深く関わっています。樋口院長は、WHOで誰も問題視していなかったゲーム依存を13年からWHOに働きかけ、18年に「ゲーム依存」を「病気」と認めさせることに成功させた人でもあります。そのため、WHOの発表には樋口院長の意向が反映されたものでもあるのです。

 ゲーム依存にしても他の疾病にしても、WHOは中立的かつ相反する意見を聞いてから認定を判断すべきでしょう。しかし、ゲーム依存の認定に関しては、どうも樋口院長主導の下で進められてしまったとしか思えず、私たちゲーム業界の人間にとって大きな疑問点であります。

 実際、ゲーム依存の研究はまだ始まったばかりで、疾病認定は時期尚早だったのではと懸念する声も上がりました。認定までの流れを見ても分かるように、WHOの責任は重いと考えられます。

 余談ですが、WHOは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威が欧州や米国まで広がる中、ある取り組みを行っています。WHOが推奨する正しい感染症対策(他の人との物理的距離を取り、こまめに手洗いを行うこと)を周知する啓発キャンペーン「#PlayApartTogether(離れていっしょに遊ぼう)」をビデオゲーム業界の企業18社とともに始めたのです。日本版のホームページには「ゲームは、落ち込む時にも気分転換の手段となり、毎日の生活と人生を豊かにしてくれるものです。そして、距離の離れた友だちともゲームを通じて心をかよわせることができます」と記されています。
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター=2018年4月、神奈川県横須賀市
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター=2018年4月、神奈川県横須賀市
 話を戻すと、条例制定の根拠について、中でも疑問視せざるを得ないのが、香川県が行ったパブリックコメント(意見公募)に対する一連の流れです。

 「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」は3月18日に成立し、4月1日に施行されました。それに先立ち、条例に対するパブリックコメントには県内に住所のある2613人と2団体、そして条例第11条に定められた県外のネット関連、ゲーム関連事業者71社から意見が寄せられました。

 このパブリックコメントは、成立前日の3月17日に県のホームページに掲載されました。パブリックコメント全体のトーンとしては、コメントを寄せた質問者側が、条例を作るにあたり「ゲーム障害に関する科学的根拠はあるのか」という質問が多かったようです。