2020年07月22日 11:48 公開

英議会下院の情報安全保障委員会(ISC)は21日、同国におけるロシアの活動に関する調査報告書を公表した。英政府はロシアの脅威を「甚だしく見くびり」、必要な対応を怠ったとした。

報告書は英政府について、「遅れを取り戻そうとしている」とし、「即時の対応」が必要だと指摘した。

また、欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票でのロシア介入の有無について、英政府は調査をしなかったとした。

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官邸は、ロシアの「深刻で長期に及ぶ脅威」を政府は「全面的に認識している」とコメントした。

一方、ロシアの外相は報告書について、「ロシア嫌悪」の内容だとした。

BBCのサラ・レインズフォード・モスクワ特派員は、ロシア政府がこの報告書を重視することはないだろうと伝えた。

ISCの調査は、偽情報の流布やサイバー攻撃、イギリス居住のロシア人の活動など広範にわたった。

報告書に記載された「高度に繊細な」詳細の大部分は、ロシアがイギリスを脅す証拠として使う恐れがあるとして公表されなかった。

BBCのゴードン・コレラ安全保障問題担当編集委員は、報告書によってロシアの介入があったのかはっきりすると多くの英国民が期待したが、それに応える内容ではなかったと指摘した。

「厄介事」扱い

ISCはイギリス国内のロシアの影響について、今や「新しい日常」となっていると指摘。イギリスはロシアにとって、北大西洋条約機構(NATO)とアメリカに次ぐ「西側における情報活動の最優先の標的」だとした。

ISC委員のスチュワート・ホージー下院議員は、政府が「テロ対策に集中したために(ロシアから)目を離してしまった」との見方を示した。

その上で、「政府はロシアの脅威に必要な対応を甚だしく軽視した。今もなお遅れを取り戻そうとしている」と述べた。

報告書は、イギリスが各種選挙において偽情報活動の「明確な標的」となっていたにもかかわらず、この問題を「厄介事」とみなし、どの政府組織も対応に乗り出さなかったと指摘。

EU離脱の国民投票(2016年)の際は、その2年前のスコットランド独立をめぐる住民投票においてロシアが影響を及ぼそうとしたことを示す信頼できる情報があったのに、情報機関は行動を起こさなかったと批判した。

また、政府が「遅ればせながらロシアの脅威に気づいた」のは、2016年の米大統領選挙で米民主党が「状況を一転する」被害を受けた後だったとした。

その上で、「情報機関の適切な部署が(EU離脱の)国民投票の前に脅威を検証していれば、ロシアが意図した結果とならなかったと予想される。公正な手続きを保護するため、情報機関が対策を取ったとも考えられる」と記述した。

さらに、ソーシャルメディア企業について、「大事なかぎを握っているが、今なお役割を果たそうとしていない」と指摘。「対応しない場合は企業名をさらす」ことを政府に求めた。

「誰も知ろうとしなかった」

ホージー議員は、選挙におけるロシア介入問題は、政府の誰も絶対に触れようとしなかったと説明。

「ロシアが国民投票に介入したり影響を及ぼそうとしたりしたのか、政府の誰も知りたくなかったし、そのため誰も知らなかった。この報告書はそれを明らかにした」、「英政府は、ロシア介入の証拠の収集を意図的に避けてきた」と記者団に述べた。

ドミニク・ラーブ外相は記者会見で、こうした見方を政府として全面的に否定すると発言。ISC委員である「1人の国会議員のコメント」に過ぎないとした。

政府はまた、2016年国民投票におけるロシア介入の有無についてISCが調査を求めたことについて、「介入が成功した証拠はない」として退ける考えを示した。

ロシア財閥とのつながり

報告書は、イギリスに投資をもたらすロシアの新興財閥を、歴代政権が歓迎してきたとする批判も展開した。

特に、イギリスの投資家ビザ(査証)プログラムや、住宅市場、司法制度、PR企業を挙げ、「豊富な資金が注がれたが、その出所に対する疑問はほとんど出なかった」とした。

「プーチン(ロシア大統領)に非常に近く、英ビジネス界や社交界に溶け込んでいる数多くのロシア人は、その資力によって受け入れられている」

報告書はさらに、富裕ロシア人と英議会上院(貴族院)とのつながりに懸念を示した。

「多くの上院議員がロシアとビジネス面で利害関係にあったり、ロシア政府関連の主要ロシア企業のために直接仕事をしていたりするのは注目に値する」

「そうした関係は、ロシア政府が利用する可能性があることを考えれば、入念に調査すべきだ」

公表まで7カ月

ISCは、英政府が報告書の提出を受けてから、公表まで7カ月かけたことも批判した。

この点をめぐっては、昨年12月の英総選挙の前の公表を避けたとの見方が出ているが、政府は否定している。

ラーブ外相は、「ロシアに対してはイギリスと同盟国への攻撃をやめるよう明確にしている」、「私たちの国、民主主義、価値観をそうした敵国から断固として守り抜く」とツイートした。

最大野党・労働党のリサ・ナンディー影の外相は、ボリス・ジョンソン首相が「政治判断」で報告書の公表を妨げたと非難した。

「政府はロシア問題で必要な対応を過小評価してきた。その間違いから学ぶことが必要だ」

(英語記事 UK 'badly underestimated' Russian threat